古くから日本料理に親しまれていた山椒
今、日本で育てられている山椒のほとんどは、「朝倉山椒」という種類のもの。これは兵庫県の朝倉(養父市八鹿町)で栽培がはじまったと言われています。
でも、山椒といえば有馬が有名です。日本料理で献立名に「有馬」とつけば、山椒を意味するほど、有馬の山椒は文化として根づいています。これは、有馬でも山椒が育てられていたことや、有馬温泉のそばで売っていた山椒の佃煮が人気だったことの名残りだそう。
たとえば「〜の有馬焼き」と言えば、山椒を加えた調味料に漬け込んで焼いたものですし、「有馬煮」は、実山椒を加えて煮たもの。そうして覚えておくと、懐石や日本料理をいただくときに、献立から味の想像ができるようになります。
ちなみに室町時代のレシピ本にも、山椒の記述があるんですよ。室町幕府の奉公衆をしていた大草三郎左衛門公次は、江戸時代後期に『大草家料理書』という、いわばレシピ本を出しているのですが、その中で「宇治丸 かばやきの事。丸にあぶりて後に切也。醤油と酒と交て付る也。又山椒味噌付て出しても吉也」と書いています。
これは今のように、うなぎの蒲焼に山椒を合わせていたというあかし。おいしいものは、昔から長く続いているということでしょうね。
山椒の実を使った醤油漬け
それでは、山椒の実を醤油漬けにしていきましょう。
だしを入れるレシピもありますが、水分を入れるとどうしても保存期間が短くなってしまうので、保存を長くしたいならば、醤油だけで漬け込むのがおすすめです。
醤油だけで漬け込んだ山椒の実だけでなく、山椒を漬けたお醤油もとってもおいしいんです。餃子を食べるときに使ったり、たまごかけごはんにするときに垂らしたり。いつものごはんも、山椒の香りが上品なアクセントになってくれるんです。
材料
山椒の実……適量
醤油……適量
※どんな分量でもできるので、手に入る山椒の実と保存瓶のサイズで決めてみてください。
作り方
1.山椒の実を枝から外し、熱湯で5分ほど茹でたら、冷水にとって1時間置く。
実から出ている細い枝は取らなくてもいいのですが、個人的には粒だけにした方が口当たりよいので、このように丁寧に取っていきます。
茹で加減は、実を潰してみて、少し柔らかさを感じるくらいまで。茹ですぎてしまうと、実が崩れやすくなるので、加減に注意してください。
2.消毒した瓶に山椒の実を入れ、醤油を注ぐ。
煮沸消毒してアルコールスプレーをした瓶に、キッチンペーパーでしっかりと水気を拭いた山椒の実と醤油を入れます。ひたひたくらいでも構いませんが、この醤油がおいしいのでちょっと多めに入れておきます。
あとはこのまま1週間〜10日ほど冷蔵庫に置いておけば、いつでも食べられるようになりますよ。
まとめ
山椒の実は、そのままごはんにかけてもいいですし、おにぎりにしたり、冷奴にかけたり。パスタに和えるのもおすすめです。山椒の実の旬は6月半ばくらいまでなので、出回っているうちにぜひつくってみてくださいね。
山椒の他にも、香りで料理を引き立ててくれるハーブは色々な種類があります。気になった方はぜひ料理用ハーブの使い方の記事もご覧ください。
参考
国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1879539/410
食のライター・料理家。
書籍や雑誌、webなどで執筆と料理の仕事をしている。アウトドア好きが高じて『メスティンBOOK』(山と渓谷社)、『キャンプでしたい100のこと』(西東社)でアウトドア料理のレシピ監修も行う。『こねこのコットン チアーカフェストーリー』(学研プラス・7/6発売)では、児童向け小説の執筆と、おはなしの中に登場するレシピの開発をしている。5歳と13歳の母。