お野菜レシピ考案家のいまむらゆいです。野菜について理解を深めていくと、その名前の由来や野菜が持つ魅力について深く学んでみたくなります。
今回、私が注目したのは、「内藤カボチャ」。江戸東京野菜として古くから栽培され、伝統を引き継ぐカボチャです。
そんな内藤カボチャの魅力を学ぶべく、生産者である冨澤ファームさんにお話を伺いました。
栽培についてのお話から、農家直伝の食べ方やレシピもご紹介します。
内藤カボチャとは?
内藤カボチャは、菊の花のような形をしていることから、「菊座カボチャ」とも呼ばれている日本カボチャのひとつです。
どんな伝統や特徴があるカボチャなのか、さらに詳しくご紹介します。
江戸東京野菜とは?
内藤カボチャは江戸東京野菜であり、伝統的な野菜です。
では、江戸東京野菜とはどんなものなのでしょうか。
徳川幕府時代には、参勤交代があったこともあり、江戸に全国から野菜の種が持ち込まれました。
その種が東京の気候風土に合うように改良されたものや、新品種、在来種も含めて江戸東京野菜としています。
「練馬ダイコン」や「金町コカブ」のように産地の名前がついている野菜が多いのが特徴です。
内藤カボチャの「内藤」とは、現在の新宿御苑である内藤家の下屋敷周辺で作り出されたことが由来となっています。
このように、江戸東京野菜は江戸からの文化を伝える役割を担っている野菜でもあるのです。
どんな味?特徴は?
内藤カボチャはみずみずしく、水分が多いのが特徴です。火を通して食べると特徴的なほろほろ感があり、ねっとりとした舌ざわりが楽しめます。
皮はうすいので、皮付きのまま調理しても良いでしょう。
味はさっぱりとした甘みがあります。味が強すぎずまろやかなので、和風の味付けにも洋風の味付けにも馴染みやすいカボチャです。
薄くスライスして水にさらせば、サラダとして生で食べることもできます。
深く入った溝が大きな特徴ですが、この溝に沿って包丁を入れると切りやすく、硬いイメージのカボチャでも比較的簡単に切ることができます。
生産者さんに聞いた栽培のこだわり
内藤カボチャについて理解を深めるために、生産者である東京都三鷹市の冨澤ファームさんにお話を伺いました!
冨澤ファームさんは、地域活性化やコミュニティ作り、食育活動にも積極的に参加され、そのひとつとして内藤カボチャの栽培を開始されました。
東京農業の価値を高める活動としても、江戸東京野菜の普及は欠かせないと言います。
Q.内藤カボチャの栽培で工夫している点はありますか?
自家採種しているので、特有の形や肉質が変わらないように、他のカボチャの花粉が付かないようにする工夫が必要です。
採種用のカボチャは隔離したところで栽培をしています。
Q.栽培の中で、西洋カボチャとの違いはありますか?
果実の色は最初は緑ですが、熟してくるとだんだん粉を吹いたようになり、最終的には茶色になります。このように完熟して色が変わるのが違う点です。
実がなっている状態で完熟させると甘みも増します。完熟した実は土に触れていると傷みやすいため、防草シートなどを使って土に接しないように努めています。
農家直伝!内藤カボチャの食べ方3つ
「内藤カボチャはどう食べたらいいの?」と初めて買う方は思うはず。
そんな疑問を解決すべく、生産者である冨澤ファームさんにおすすめの食べ方を教えてもらいました。
天ぷら
江戸時代では、内藤カボチャを天ぷらで食べるのが流行だったとか。
水分が多いので、揚げることで外はサクッと中はジューシーに仕上がります。少なめの油で揚げ焼きのようにすれば、大量の油を使う調理の手間も省けて、簡単に天ぷらを作ることができますよ。
初めて食べるときには、昔からの定番の食べ方で味わってみては?
プリン
内藤カボチャのさわやかな甘みは、甘いものが苦手な方にもぴったりです。豆乳を使うとよりあっさりとしたプリンになります。
西洋カボチャだととろみが付きすぎてしまうものも、内藤カボチャはさらっとしているので、歯ざわりがなめらかに仕上がります。
プリンの他にパウンドケーキなどのデザートにもおすすめです。
オーブン焼き
焼くことで、ほくほくしっとり、内藤カボチャのおいしさをダイレクトに楽しめます。
そのまま食べてもよし、サラダのトッピングにしても鮮やかな色がよく映えます。
そのほかにも内藤カボチャは、コロッケ、ポタージュ、カボチャサラダなどさまざまな料理やお菓子に使ってもおいしいカボチャです。
〈レシピ〉内藤カボチャのオーブン焼き
ご紹介した内藤カボチャのおすすめの食べ方の中から、生産者である冨澤ファームさん直伝の「オーブン焼き」のレシピをお伝えします!
シンプルな手順で出来上がるので、ぜひ試してみてくださいね。
〈手順〉
[下準備]オーブンを220℃で予熱しておく。
①内藤カボチャを1.5cm角に切り、クッキングシートを敷いた天板に並べる。
②天板に並べた内藤カボチャに溶かしたバターまたはオリーブオイルをかける。その後、塩こしょうをまんべんなくふる。
③200℃のオーブンで20分焼く。
〈ポイント〉
・オーブン焼きにすると、適度にカボチャの水分が抜けて、しっとりとした食感になります。
・少し焦げ目がつく程度に焼くと香ばしく仕上がります。
・一度にたくさん焼いて、余ったらスープにするなどしてアレンジするのもおすすめです。
おわりに
内藤カボチャは手に入る機会がなかなかないこともあり、あまり馴染みのない野菜かもしれません。
伝統を守り、大切に栽培を続けている生産者さんがいるからこそ、今でも内藤カボチャを楽しむことができています。
ぜひ、さまざまな料理で内藤カボチャの魅力を味わってみてくださいね。
猪俣慶子『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』、成美堂出版、2012年
竹道茂『江戸東京野菜 物語篇 』、農山漁村文化協会、2009年
大竹道茂『江戸東京野菜の物語』、平凡社、2020年
管理栄養士、お野菜レシピ考案家。レシピ提供、フードスタイリング、コラム執筆、料理教室など野菜に関する分野を中心に活動。Instagram【 #ぽんレシピ 】で100レシピ以上公開中。