通称「和製グレープフルーツ」河内晩柑
河内晩柑は、大正時代に熊本県熊本市河内町で偶然発見された柑橘で、起源は明らかになっていませんが、文旦の仲間という説があります。
大玉で、外皮は黄色。皮と果肉の間にある白いスポンジ状の「アルペド」と呼ばれる部分も厚いため、見た目は文旦とよく似ていますが、比較的柔らかく、手で皮をむくことができます。
果汁は河内晩柑の方が多く、文旦と比べると苦味や酸味はマイルド。さわやかな風味があり、グレープフルーツにも似ていることから、「和製グレープフルーツ」と表現されることもあります。
発見された「河内町」と「晩生」の「柑橘」というところから品種名は「河内晩柑」と名付けられたといわれていますが、美生柑、愛南ゴールド、ハーブ柑、天草晩柑、ジューシーフルーツ、ジューシーオレンジなど、地域によって様々な呼び名があります。
一般的には種が少ないとされる柑橘ですが、樹齢や周りの環境などにより多く入ることもあります。
出回り時期は4月~8月頃
河内晩柑の出回り時期は4月~8月頃で、他の柑橘類と比べると比較的長め。しかし、その中でも収穫時期によって味わいが全く異なっています。
出始めの4月~5月頃に出回る河内晩柑は果汁がたっぷり。果肉も柔らかく、酸味と甘味のバランスがとれた、ジューシーな河内晩柑を楽しむことができます。
これに対し、6月以降は水分が適度に抜け、さっぱりした味とプリッとした食感を味わうことができます。ただし、後半になると、外皮が一部緑がかってくることがあります。これは温度が上がることによる「回青(かいせい)現象」で、品質には問題ありません。
河内晩柑の選び方と保存方法
ずっしりと重みがあり、皮に張りがあるものを選びましょう。大きくても軽いものは水分が抜けている可能性があります。また、ヘタが取れていたり茶色くなっていたりするものは避けるようにしてください。
皮にシミや軽い傷があるものもありますが、皮が厚い柑橘なので、あまり気にする必要はありません。
保存の際は、新聞紙に包んでポリ袋に入れ、涼しいところで保存しましょう。可能であれば、冷蔵庫に入れると良いでしょう。
河内晩柑の楽しみ方
まずはそのまま食べること。これは基本中の基本ですね。簡単に手で剥くこともできますが、スマイルカットにすると、食べやすいです。苦味がお好きな人はアルペドも一緒に味わってみてはいかがでしょう。
果肉と果汁をたっぷり使い、寒天やゼラチンで固めたゼリーも良いですね。砂糖などの甘みは程々にして、河内晩柑本来の甘さを楽しんでみましょう。
こちらはヨーグルトドリンクを加えた河内晩柑ラッシー。簡単に作れるので、お仕事の合間にもピッタリ。
その他、ジャムやドライフルーツなどにしても良いですね。また、果汁を搾り製氷皿などに入れて冷凍しておくと、いつでも使えて便利です。
ここからはもう少しアレンジを加えた楽しみ方をご紹介します。
河内晩柑+調味料で簡単アレンジ3種
まずは、醤油を加えた「河内晩柑醤油」をご紹介します。
使うのは醤油と河内晩柑の種、それに清潔な空き容器のみ。
そのまま捨ててしまいがちな種と醤油を2日~3日漬け込んでおくと、醤油に河内晩柑の風味が移ります。冷奴にかけても良いですし、刺身醤油としても使えます。
一緒に少量の鰹節や昆布などを入れておくと即席ポン酢になります。
続いて、砂糖を加えた「河内晩柑の砂糖漬け」と、塩を加えた「塩河内晩柑」。
「河内晩柑の砂糖漬け」は、食べやすく切った河内晩柑と、その重量の80~100パーセントくらいの重量のきび糖(普通の砂糖でも可)を用意し、煮沸消毒をした清潔な容器に入れます。
毎日振って10日ほど経ち、水分が出てなじんできたら完成です。そのまま食べても良いですし、ヨーグルトなどに乗せても美味しいです。水分と果肉をグラスに入れ、炭酸などで割るのもオススメです。
「塩河内晩柑」は、細かく切った河内晩柑と、その重量の10~20パーセントくらいの重量の塩を用意し、煮沸消毒をした清潔な容器に入れます。
砂糖漬け同様、毎日振って10日ほど経ち、トロッとしてきたら完成です。「塩レモン」のようにどんな料理にも使えます。
どちらもすぐに冷蔵庫に入れると熟成しないので、直射日光の当たらないところで常温のまま置き、完成したら冷蔵庫に保存しましょう。
河内晩柑胡椒
【材料(作りやすい量)】
・河内晩柑皮 30g
・青唐辛子 20g
・塩 10g
【作り方】
1.河内晩柑をよく洗って水気を拭き取り、黄色い部分のみピーラーなどで削ぐ。
2.青唐辛子はヘタと種を取る。
3.1と2をみじん切りにしてすり鉢に入れ、塩を加えてすり混ぜ、全体になじませる。
青唐辛子は刺激の強い食材なので、素手ではなく手袋を着用することをオススメします。心配な人はマスクやメガネをつけると安心です。仕上げはフードプロセッサーなどを使っても良いでしょう。
すぐに食べることもできますが、1週間くらい寝かせると塩のカドが取れ、深みのある味わいになります。鍋料理の薬味として使ったり、お肉や魚のソテーに乗せたり、ドレッシングの隠し味などにも使えます。
清潔な容器で冷蔵庫に保存すれば約1年はもちます。時間が経つほど熟成してまろやかになるので、変化を楽しみながら使ってくださいね。
河内晩柑味噌
【材料(作りやすい量)】
・河内晩柑果汁+果肉 50g
・河内晩柑皮 20g
・味噌(写真は米味噌を使用) 50g
・みりん 大さじ2
・酒 大さじ1
【作り方】
1.河内晩柑をよく洗って水気を拭き取り、皮の黄色い部分のみピーラーなどで削ぎ、みじん切りにする。果汁を搾り、果肉を細かく刻む。
2.鍋に果汁と果肉、味噌・みりん・酒を入れて強火にかけ、煮立ったら中火にしてかき混ぜながら水分を飛ばす。
3.皮を入れてかき混ぜ、少し煮詰めたら火を止め、粗熱を取る。
河内晩柑の爽やかな甘味を味わうため、砂糖は加えず仕上げました。甘めが好きな方は少し砂糖を加えてみてください。
ふろふき大根や焼いた厚揚げなどに乗せるのがオススメです。炒め物などにも良いですよ。
清潔な容器で冷蔵庫に保存すれば10日ほどはもちますが、できるだけ早く食べ切るようにしましょう。
河内晩柑マヨネーズ
【材料(作りやすい量)】
・河内晩柑果汁 大さじ1
・卵黄 1個
・塩 小さじ1/2
・粒マスタード 小さじ1
・オリーブオイル 100ml
【作り方】
1.卵は常温に戻しておく。
2.ボールに河内晩柑果汁、卵黄、塩、粒マスタードを入れ、混ぜ合わせる。
3.2にオリーブオイルを大さじ1くらい入れ、白っぽくなるまで混ぜる。
4.3を、オリーブオイルがなくなるまで繰り返す。
自家製マヨネーズを作るときは酢を使いますが、その代わりに河内晩柑果汁を使いました。野菜スティックにつけるのはもちろん、ポテトサラダやマカロニサラダにも。
おろしニンニクを加えて豆乳やヨーグルトで少し伸ばすと、シーザードレッシングのようにも使えます。
こちらは冷蔵で5日ほどはもちますが、生の卵黄を使っていますので、なるべく早めに使い切るようにしてください。
河内晩柑のカッテージチーズ
【材料(約50g分)】
・河内晩柑果汁 大さじ2
・牛乳250ml
【作り方】
1.牛乳を鍋に入れ、中火にかける。
2.沸騰直前になったら弱火にし、河内晩柑果汁を大さじ1ずつ加え、軽く混ぜる。
3.牛乳が固まってきたら、火を止め、10分ほど置く。
4.キッチンペーパーなどで水を切りながら、冷蔵庫で2時間ほど冷やす。
元々淡白なお味のカッテージチーズ。ほのかな河内晩柑の香りを感じることができるよう、塩などは加えずに仕上げました。
写真は少量の塩とナッツ、オリーブオイルを加えてクラッカーに乗せ、おつまみ風に仕上げています。ハチミツやドライフルーツなどとも合いますし、サラダなどに加えても良いですね。
水分が多いカッテージチーズはカビが生えやすいため、すぐに食べ切るようにしてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は収穫期が長い河内晩柑を堪能できるアレンジをたくさんご紹介しました。
食べチョクでも購入することができますので、是非いろいろな形で楽しんでくださいね。
工学部卒の元SE。
結婚後、「焼肉屋の嫁が野菜ソムリエっておもしろくない?」という興味で野菜ソムリエプロの資格を取得。その後もフードツーリズムマイスターやフードロスゼロ料理アドバイザーなどの食に関する資格を取得し、現在は自治体等と連携しながら農産物のPRや地産地消の推進、食育活動などを行なっている。