タイ料理・シンプルクッキング研究家、サクライチエリです。
スーパーで生栗を見かけるようになると途端にそわそわし始め、ある日覚悟を決めて栗を購入し渋皮煮を作ると、ようやく秋を楽しめる気持ちになるようになって早10年以上になります。
栗の渋皮煮は、作り方はシンプルなのに、1つ1つの作業に丁寧さが必要なので、心が急かされていると上手に作る事が出来ません。
また、基本の「型」が決まれば、その後のアレンジはその日の気分次第で変えられるので、何回作っても飽きません。
秋の夜長、家事や読書の合間の時間に栗と向き合って、美味しい秋を楽しみませんか?
失敗最小限の栗の鬼皮剥き
栗の渋皮煮の最大の難関は、鬼皮剥きにあると思います。
渋皮を傷つけないように気を張って剥いていても、ナイフが少し当たっただけで、黄色い実が見えてしまうことがあります。それが続くと、「あー、栗ご飯にしなくちゃ」と、栗ご飯に大変失礼な?変な敗北感にさいなまれます。
私はある年から、お気楽な方法と自分の指と爪の強さを武器に、失敗率が格段に減った方法で鬼皮を剥いています。
今回はその方法をご紹介します。
1. お鍋にたっぷりのお湯を入れて沸騰したら生栗を入れ、火を止めてお湯が冷めるまで待つ
お湯が冷めたら、栗をザルにあけて鬼皮を剥きます。
うちの場合、大抵午前中のお買い物で栗に出会って買ってくるので、お昼ご飯を作っている間にお湯を沸かして、栗を入れたらご飯を食べて、食べ終わってお湯が冷めたら皮むき開始というスケジュールです。
ついでに、ご飯のお皿は栗のお湯をかけて漬けておきます。
2 栗のてっぺんを爪で剥がし、鬼皮を指でぺろりと剥ぐ
爪が丈夫でない方は、ペティナイフなどを使う事をお勧めしますが、爪が程よく短くて丈夫な場合は、ナイフを使うよりも爪先で先端をはがす方が、渋皮に傷がつきにくいです。
熱いお湯に急に浸けたことによって、栗の鬼皮と渋皮の間の空気が若干膨張するのと、鬼皮に水分が沁み込んで柔らかくなるというのがこの方法の原理です。
また、もし虫食いがあれば、お湯に漬けた時に虫食いの穴から水が入るのですぐに分かります。
鬼皮はペロンと剥げても、底の部分の剥ぎづらい皮を頑張って剥がそうとしたら、黄色い実が見えてしまいがっかりしたという経験を持たれている方も多いかと思いますが、手で剥がせない皮は無理に剥がす必要はありません。
この後の、茹でこぼしの過程で自然にふやけて取れるようになります。
「ながら家事」で、栗の茹でこぼし
剥いた栗は、たっぷりの水を入れたお鍋に沈めて、大さじ1の重曹を入れて茹でます。
鍋底の火の当たりが心配な場合は、鍋底にもキッチンペーパーを敷いてください。栗が浮いてくるようであれば、キッチンペーパーの落とし蓋をします。
沸騰したら火を弱めて15分茹でます。
そして、その間に食べ終わった食器を洗って拭いて片付けたり、キッチンの掃除をしたりといった家事を済ませられます。更に時間に余裕があれば、タイマーをつけて、秋の読書も楽しめます。
そうして沸騰してから15分経ったら、茹でた栗をたっぷりの水を張ったボウルに移し、鍋をさっと洗い、またたっぷりの水を入れます。
そこに1粒ずつ、皮の具合をチェックした栗を戻していき、再び重曹大さじ1を加えて加熱し、沸騰させてから15分茹でます。それを3回程繰り返します。
茹でると、最初の鬼皮剥きで剥がれずに残っていた皮や固い筋も、重曹のアルカリと炭酸成分によって柔らかくなります。
また、1回目の茹でこぼしでも取れない頑固な皮や筋も、2回、3回と茹でこぼせば、無理なく剥がれていくので、焦って力を入れて剥かずにマイペースに何度か茹でこぼしてみてください。
好みの砂糖、好みの甘さで栗を煮る
重曹を加えたたっぷりの水で3回も茹でこぼせば、絶妙な皮の薄さ加減になっているのが手で感じられると思います。そうなれば、後は砂糖を加えて煮るだけです。
中火で煮始め、煮立ったら火を弱め、時々アクを取りつつ砂糖を2~3回に分けて加えながら30分程煮たら出来上がりです。
砂糖の種類は、すっきりクリアな味わいにしたければグラニュー糖、こっくりした味わいを目指す場合はブラウンシュガー。砂糖の量は、あっさりした甘味で早めに消費する場合は控えめ、長期保存する場合は水:砂糖は1:1くらいの方が安心です。
砂糖の種類や量のアレンジに加えて、ブランデーなどのお酒を加えると大人な香り、バニラビーンズを加えると、焼き菓子やアイスクリームなど洋菓子によく合う香りになったりと、アレンジは色々楽しめます。
ちなみにここ数年の私は、砂糖の種類はその年によって変えています。砂糖の量は、砂糖:水=3:10にし、栗が煮汁から出ない量で煮始めて、煮込み終わったら鍋から栗を取り出し瓶に入れ、煮汁を一気に半量まで煮詰めてから、瓶にひたひたに注いですぐに蓋をして、完全に冷めてから冷蔵庫に入れて保管しています。
だいたい2~3瓶に分けて保存して、最後の消費はおせち料理の「茶色い栗きんとんに、栗の渋皮煮をどーんと入れる」という食べ方で食べ切る感じが恒例です。
まとめ
栗の渋皮煮は、渋皮が破けなければとてもシンプルで簡単で、保存も利いて、お客様受けも良い便利な一品です。そして、一度コツを覚えたら毎年作りたくなる、奥深い料理でもあります。
私が長年の「栗仕事」で得たポイントは3つ。
1. 無理に皮をむしり取るな。
2. ながら調理はやってもいいが、無理に時間を端折るべからず。
3. 一度茹で始めたら、渋皮を乾かさない。常時水に浸かってる状態にする。
そして、美味しい渋皮煮を作るポイントは「新鮮な栗を使う」ことです。
この記事を読んで、栗の渋皮煮を作ろうと思った方、直接農家さんから購入して、美味しい渋皮煮を冷蔵庫の一員に迎え入れてあげて下さいね。
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タイ、バンコクにて8年間、料理教室コーディネーターなどをしながら、世界各地で料理を学ぶ。
日本帰国後は、タイ料理教室を主宰しつつ、日本の美味しい農産物とアジア料理とのコラボレーション・イベントを企画運営するなど、日本のクオリティの高い食材と出会う活動を行う。また、一児の母としての経験も基に、子ども向け食育ワークショップなどの活動にも力を注ぐ。