道具が料理をおいしくしてくれる
包丁を選ぶとき、「高価で名の知れたメーカーのものであればどれでもいい」と思っていたら大間違い。
もちろん高価なものにはそれに応じた良さがありますが、価格よりも大切なのは「自分の身体や手に馴染むものを選ぶこと」です。
包丁と一口に言っても刃渡りや柄の太さ、握ったときの感触はそれぞれ。
できれば店頭で握ってみて、自分の手のサイズに合うかどうかも考えて選んでみましょう。
また、「ちゃんとメンテナンスをすること」もとても大切。
切れ味が悪くなってきたなと思ったら、砥石やシャープナーできちんと砥ぎ、いつでもスッと切れるようにしておきます。
毎日お料理する方なら、週末には必ず研ぐなどと習慣化しておくと忘れなくてよいでしょう。
ステンレス製であっても錆びてしまうことがあるので、洗った後は必ず水気をよく拭いてしまいます。錆びてしまったら、クレンザーなどの磨き粉で磨きましょう。
必ず持っておきたいのは「三徳包丁」
さて、それではひとつひとつの包丁の種類を見ていきましょう。
この写真にある包丁は、三徳包丁。文化包丁とも呼ばれています。
「三徳」の由来は、野菜・お肉・魚の三つが切れること。この包丁を使ってすべての食材を切っている方が多いかもしれませんね。
家庭で何本も包丁を収納しておくのは大変ですよね。三徳包丁はなんといっても万能。
例えば「これから一人暮らしをはじめるときにまず包丁を一本買う」というタイミングであれば、これをおすすめします。
きちんと洗えば、さまざまな食材を同じ包丁で切るのも問題ありません。
わたしが使っているのは、山形県にある島田刃物製作所の三徳包丁。
縁起がよいと言われているエンジュの木で作られた柄は少し細めで軽く、ずっと持っていても疲れません。
刃には叩いたあとの槌目があり、これがあることで食材がくっつきにくくて作業がスムーズ。
打ち出物ですが両刃で、洋包丁と同じように扱うことができます。
PINT「鍛冶職人の包丁」
野菜を上手に切りたいなら「菜切り包丁」
こちらは「菜切り包丁」という名の通り、野菜を切るのに適している包丁です。
三徳包丁でも野菜は切れますが、菜切りでないと! というポイントは、野菜の皮むきと千切り。
皮むきは、大根の輪切りで想像していただくとわかりやすいと思いますが、三徳のように刃が斜めに入ってしまうと、厚みが変わってしまったり、平らにむくのが難しかったりするのです。
まっすぐな刃を入れることで、桂むきなどの薄い皮むきも楽にできます。
また、刃がとても薄いので、千切りのように細く切るのがとても上手にできます。
千切りをしても、とんかつ屋さんのように細く切れず、太くなってしまうのは「包丁のせい」かもしれませんよ。
わたしが使っているのは、山梨県の工房で包丁やフライパンなどを作っていらっしゃる上田裕之さんのもの。
皮や野菜の繊細な部分を切るときにもブレないしっかりとした硬い刃でありながら、程よい重さが野菜に落ちてくれるので、肩の力を抜いていても切ることができるんですよ。
菜切り包丁は120mm〜180mmまで5つのサイズ展開があります。(わたしのものは165mm)
パンを切る機会がある方は絶対持っておきたい「パン切り包丁」
パンに使うのは、刃がギザギザしているパン切り包丁です。
ふわふわなパンを切るときに、普通の包丁でカットしてしまうと、断面が潰れてしまいますよね。
このような包丁なら、ふっくらしたパンを傷つけることなく切ることができます。
食パンなどをお店で切ってもらったり、スライスしてあるものを買っている方はぜひ、ブロックで買って自分で切ってみてください。
パンは焼き上げてから時間を追うごとにどんどん水分を蒸発させるので、切ってあればあるほど水分が飛びやすく、カサカサになりやすいんです。
ブロックで買って食べる分だけ自分で切れば、それだけおいしくいただくことができますよ。
わたしが使っているのは、フランス・ジャンデュボ社のもの。
パン切り包丁はキッチンだけでなく、食卓にのせることもあるので、かわいいものを選んでいます。
さまざまな色があるので、気になる方は見てみてくださいね。
これ包丁!? スパチュラ+ナイフでアウトドアにも
こちらは、スパチュラとナイフが一体化している「カフェ・ド・スパチュラ」という業務用の製品。
和田商店さんが作っていたのですが、残念ながらこのタイプは廃盤で、今は新しい形のものが発売しています。
柔らかいものならギザギザした刃で切れるので、パンやトマトなどをカットしたり、ジャムやクリームをスパチュラ部分で塗ったりと重宝しています。
主に我が家ではアウトドアに持っていくことが多い一本です。
子どもが料理しても危なくない包丁って!?
最後にご紹介する2本は、子どもたちに使わせているもの。
右側のジャンデュボ社のものはテーブルナイフですが、刃がとても丈夫なので、5歳児がきゅうりや茄子などを切るのに使っています。
断面はギザギザになってしまうのですが、手を切る心配がないので、痛い思いをして包丁が怖くなってしまう年齢の子にはぴったり。
のちのちはテーブルナイフとしても使えるので、とても便利ですよ。
そして左側のピンク色のナイフは、いただきものなので詳しい製品元は不明なのですが、おそらくセラミック製で軽く、ペティナイフ程度のサイズ。
テーブルナイフでは切れない蓮根などの硬いものやお肉などの繊維が断ち切りにくいものを切る時に便利です。
テーブルナイフに慣れた頃、これは手が切れてしまうくらい強い包丁だよ、と言って切り替えました。
手指の怪我は避けられませんが、それも経験。痛い思いをすると、今度はそうならないようにしようって子どもも必死に考えて包丁と向き合うんですよね。こちらは5〜6歳以降の子におすすめです。
日々使うものですから、これ!と思うものをぜひ見つけてみてくださいね。道具が揃うとお料理も楽しくなりますよ。
新しい包丁を揃えたら、色々な野菜の切り方にチャレンジしてみませんか?切り方によって、野菜の味が大きく変化します。
ぜひこちらの記事を参考にしてみてください♪
食のライター・料理家。
書籍や雑誌、webなどで執筆と料理の仕事をしている。アウトドア好きが高じて『メスティンBOOK』(山と渓谷社)、『キャンプでしたい100のこと』(西東社)でアウトドア料理のレシピ監修も行う。『こねこのコットン チアーカフェストーリー』(学研プラス・7/6発売)では、児童向け小説の執筆と、おはなしの中に登場するレシピの開発をしている。5歳と13歳の母。