私の住む山梨県では、毎年10月下旬頃になると大きな渋柿がたくさん出回ります。
その大半は「大和百目」や「甲州百目」という名の不完全渋柿で、主に干し柿に加工されて食されています。
私の実家の本家には祖父母が残してくれた「甲州百目」の樹があり、在りし日の祖母から受け継いだ方法で毎年「枯露柿(ころがき)」と呼ばれる干し柿をつくっています。
今回はそんな祖母から受け継いだ「枯露柿」づくりについてご紹介します。
「甲州百目」の特徴
「甲州百目」や「大和百目」は、元々百匁(=約375グラム)のサイズがあることからその名前が付いたとも言われ、中には500グラムを超えるものもあります。
渋柿といっても糖度は20度を超えているものもあり、じっくり渋抜きを行うことで、濃厚な干し柿に仕上がります。
干し柿のタイプは主に2種類
一般的に「干し柿」というと大きく分けて2種類あります。
1つは水分を50パーセントくらい残した「あんぽ柿」とも呼ばれるセミドライタイプ。
そしてもう1つが水分を25~30パーセントになるまで乾燥させたドライタイプ。
我が家でつくるのはドライタイプで、山梨県では「枯露柿」と呼ばれて親しまれています。
枯露柿づくりスタート
ここからは我が家の枯露柿づくりの様子をご紹介したいと思います。
1. 柿を収穫します。枝は吊るすときに使うので、付けたままにします。
2. 枝をT字に整えます。ヘタは吊るす際引っかからないように極力取り除きます。
3. ピーラーで皮をむきます。1つ1つがとても大きいため、意外と大変。終わる頃には握力がなくなっていることも多々。
また、大量にむくので、皮もたくさん。
祖母はたくあんを漬ける際使っていたようですが、現在はコンポストに入れて土に返しています。
4. T字に残したヘタに紐をつけ、2個の柿をつなぎます。
5. 10秒ほど熱湯に入れます。これは、殺菌やカビ防止のためです。
我が家ではこの方法で行なっていますが、他にも焼酎を使ったり、硫黄で燻したりする方法を取るお宅もあります。
その方が綺麗な色に仕上がると言われていますので、販売用など見た目を重視する場合にはそれらの方法を取るところが多いようです。
6. 柿を吊るします。我が家ではベランダに吊るしていますが、軒先などに吊るすお宅も多いです。
全て干し終えたら、初日の作業は終了。しばらくは自然任せです。
気温が上がり過ぎるとカビが生えてしまうので、扇風機などを使って調整しながら見守ります。また、雨などで濡れないようにも注意が必要です。
スタートから約3週間
程よく乾いてきたら、柿をもんで芯を切ります。力を入れすぎて熟した中身が出てきてしまわないよう気を付けながら、作業を行います。
<芯切りとは>
柿の一部分が硬くなりすぎないように、揉んで柔らかくする作業。渋が早く抜け、甘みが増す効果もある。
スタートから約1か月
芯切りから約1週間。全体的に乾いてきました。
ここまで来たら柿を全ておろし、平干しします。
1日1回程度表裏を変えながら10日前後。ここでも雨は大敵。また気温も下がってくるので、朝晩の霜にも注意が必要です。
いよいよ完成
白い粉(こ)が吹いてきたら完成です。
販売用の枯露柿とは異なり、決して形が良いとはいえませんが、それでも愛おしく感じるのは自家製ならではの醍醐味でしょうか。
愛情をかけて丁寧に仕上げた枯露柿の味は格別です。
オススメな食べかた
干し柿はそのまま食べる以外にも、ラム酒などに漬けてケーキに入れたり、開いて柚子皮やナッツなどと一緒に巻いておつまみにしたり、天ぷらにしてスイーツとしていただくなど、いろいろなアレンジもできます。
最近ではドライフルーツ全般が防災食としても注目されており、もちろんそのままでも保存性は高いのですが、そのままラップなどに包んで冷凍することもできる上、停電時にもほとんど劣化することなく食べることができるので、冷凍庫に常備しておくと安心です。
晩秋の手仕事にチャレンジしたいかたは渋柿をお取り寄せ
今回は「甲州百目」を使った干し柿をご紹介しましたが、他にも「市田柿」や「愛宕柿」など、干し柿にする渋柿はたくさんあり、食べチョクでもいくつか出品されています。
また、「つくるのはちょっと大変」という人には、加工済のものも販売されています。生産者様が手塩にかけて仕上げた干し柿と食べ比べてみるのも面白いかもしれませんね。
是非チェックしてみてください。
干し柿の手仕事におすすめの柿
ご家庭での干し柿づくり用に、奈良県特産の釣鐘型の江戸柿(渋柿)を、レシピとひも付きのお手軽セットにして販売されています!
とくに初めて干し柿に挑戦する方にオススメです!
生産者さんがつくったおすすめ干し柿
甘くて中はトロっとジューシー、年齢層問わず大人気のおやつです。
クリームチーズなどと合わせていただくのも絶品だとか。
冬の夕暮れのような夕焼け色の『あんぽ柿』ぜひお試しください
工学部卒の元SE。
結婚後、「焼肉屋の嫁が野菜ソムリエっておもしろくない?」という興味で野菜ソムリエプロの資格を取得。その後もフードツーリズムマイスターやフードロスゼロ料理アドバイザーなどの食に関する資格を取得し、現在は自治体等と連携しながら農産物のPRや地産地消の推進、食育活動などを行なっている。