もやしって、どんな野菜?
もやしは漢字で「萌やし」、「糵」と書き、国語辞典では「穀類などの種子を光を当てずに発芽させたもの」と出てきます。
カイワレなど、主にアブラナ科の植物が発芽したものが「スプラウト」といわれてサラダなどの彩りになりますが、もやしは主に、豆類を光を当てない状態で発芽の手前まで育てたものになります。
その歴史は古く、日本では平安時代に書かれた、「本草和名」という、薬草の本でもやしが紹介されています。
以後、江戸時代まではごく限られた土地で栽培され、薬草や珍味として取り扱われてきたのだとか。
海外から栽培方法が伝えられ、明治から大正時代には、港町の横浜、神戸、大阪などの大都市圏で栽培業者が台頭してきました。
はじめはごく小規模な生産工場が直接販売を手掛けていましたが、徐々に日本各地にもやし栽培が広がり、大量生産化されていきます。
1960年代には八百屋さんで量り売りされていたもやしが、今のように小分けのパック包装でスーパーに並ぶようになり、今に至ります。
代表的なもやしの種類
現在日本では、主に3種類のもやしが生産されています。
緑豆もやし
日本におけるもやし生産量の約9割が緑豆もやし。
芯が太目でクセのない味なので、サラダや炒め物、鍋物、汁物など、何の料理にしても相性が良いです。
ブラックマッペ
主に西日本で流通している種類で、ケツルアズキという黒緑色の豆のもやしです。
緑豆もやしよりも芯が細く、もやし独特のにおいが少なめで、ほのかな甘味があります。しっかりした食感で、お好み焼きやラーメンの具として使われています。
大豆もやし
大豆の豆がついたもやしです。豆の香りとしっかりした食感が特徴。ナムルやチゲなど、韓国料理に使われることが多いです。
もやしをおいしく調理するポイント
もやしは、種類によっておいしく調理するポイントが異なります。
緑豆もやし、ブラックマッペもやしを茹でる時は、完全に沸騰したお湯に入れて、再び沸いてから10秒程度でお湯を切ります。炒める時も、フライパンを十分に熱してから短時間でさっと炒めることで、シャキッと仕上がります。
一方で、大豆もやしは豆の部分まで火を通す必要があるため、他の種類のもやしとは茹で方が違います。
鍋に大豆もやしを入れてから、もやしの半分くらいの高さの水を入れて火にかけ、沸騰したら火を弱めて蓋をして5分ほど蒸し煮にします。炒める時も先に茹でてから炒めた方が、豆の風味が生きておいしく仕上がりますよ。
またどの品種も、茹でた後に水にさらすと水っぽくなってしまうので、冷ます場合はバットなどに広げるようにしましょう。
お取り寄せしたい珍しいもやし
一年中低価格で購入できる事が魅力のひとつであるもやしですが、中にはお取り寄せしたいような珍しいもやしもあります。
大鰐温泉もやし
長さが30cmにもなるもやしで、青森県中南部の大鰐町の伝統野菜です。温泉熱と温泉水のみを用いた独特の栽培方法で、350年以上前から栽培されてきました。
そばの実と「小八豆(こはちまめ)」という在来種の大豆の2種類のもやしが作られており、長さだけでなく、伝統栽培法による土の香りが感じられる独特の香りとシャキシャキした歯ごたえが特徴です。
ピーナッツもやし
福岡県の離島能古島(のこのしま)発祥の発芽野菜。
島在住のカイワレ大根生産者さんが海外に種を探しに行った先で、畑に落ちて発芽した落花生を子ども達が拾っているのを目にしたことから、「ピーナッツもやし」の発想がひらめいたそうです。
軸が太く食べ応えがあり、豆の部分で落花生の風味が楽しめるのが特徴です。ナムルや炒め物はもちろん、天ぷらにしても美味しいのは、ピーナッツもやしならでは。
まとめ
もやしは家計に優しいカサ増し野菜にあらず、種類によって香りも歯触りも違ってきます。
また、今回ご紹介したもやしだけでなく、産地によってこだわりの水や豆を使ったもやしが日本各地に存在します。
蒸したり茹でたり炒めたり、汁ものや、種類によっては揚物にまでなる、もやし料理を楽しんで見てくださいね。
参考
goo国語辞典 https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E8%90%8C%E3%82%84%E3%81%97/#jn-220293
もやし生産者協会 http://www.moyashi.or.jp/
キューピー https://www.kewpie.co.jp/recipes/knowledge/article/4/
大鰐町 http://www.town.owani.lg.jp/index.cfm/8,199,36,html
タイ、バンコクにて8年間、料理教室コーディネーターなどをしながら、世界各地で料理を学ぶ。
日本帰国後は、タイ料理教室を主宰しつつ、日本の美味しい農産物とアジア料理とのコラボレーション・イベントを企画運営するなど、日本のクオリティの高い食材と出会う活動を行う。また、一児の母としての経験も基に、子ども向け食育ワークショップなどの活動にも力を注ぐ。