日本のマンゴー栽培のはじまりと生産量
マンゴーの日本での栽培は明治時代の半ばからと言われており、大正初期には鹿児島高等農林学校(現 鹿児島大学農学部)に持ち込まれたという記録があります。
その後、昭和30年代から50年代にかけて、アメリカ、台湾から数種類の品種が持ち込まれましたが、露地栽培でマンゴー栽培には気候が適さず生産量もごくわずかでした。
1980年代に入ってから沖縄県で雨よけ栽培技術が開発されたことを皮切りに、各地でハウス栽培が導入され、ようやく安定して果実をつけることが出来るようになりました。
令和元年度の統計によると、全国のマンゴー生産量は3,519.4トン。生産量日本一は沖縄県の52%です。
2位の宮崎県が34%、3位の鹿児島県が12%と、九州地方で栽培が盛んですが、東京都の小笠原諸島や静岡県、北海道でもマンゴーが生産されています。
日本で栽培されているマンゴーの種類
世界中に500種類はあると言われるマンゴーですが、日本で栽培されているマンゴーの90%以上は「アップルマンゴー」と呼ばれるアーウィン種です。リンゴのように熟すと皮が赤くなり、果肉の繊維質が少ないため肉質が滑らかなのが特徴。
その他に、日本では以下の品種のマンゴーが栽培されています。
キーツマンゴー
熟しても皮の色が鮮やかな緑色のマンゴー。
一般的なアップルマンゴーの1個の重さが500g程度なのに対して、キーツマンゴーの大きいものは2㎏にもなります。
とろける舌ざわりと濃厚な味わい、豊かな甘い香りが楽しめます。
玉文(ぎょくぶん)マンゴー
1個700gほどになる長卵形で大玉のマンゴー。濃いオレンジの果肉は滑らかな食感でクセが少なく、非常に甘いのが特徴で糖度は20%を超えます。
愛紅(あいこう)
平成20年に品種登録された、国内初のマンゴーの新品種。
台湾で栽培されている「金煌」(きんこう)と国内で主に栽培されているアーウィン種を交配させたもので、味は濃厚、きめ細かくプリンのような滑らかな食感が特徴です。
ご紹介した3種のマンゴーはどれも栽培量が少ない希少品種で、「幻の品種」といえます。
おいしい国産マンゴーの選び方と保存方法
お店で国産マンゴーを選ぶ時は、果皮にツヤがあり、ふっくらとした厚みあるものを選びましょう。
マンゴーは収穫後も追熟します。取って触れた時に柔らかい弾力を感じるものが、完熟している食べ頃のマンゴーです
熟していないものは常温で保存し、完熟したものは日持ちしないので、早めに食べきりましょう。
完熟したときにすぐに食べられない時は、皮を剥いてカットして、冷凍することもおすすめします。
マンゴーの切り方は、こちらの記事でも紹介しておりますので、参考にしてみてください。
【保存版】本場タイで知ったマンゴーの皮の切り方・剥き方・おすすめの食べ方 【用途別】
マンゴー栽培における各地の取り組み
南国の果物であるマンゴーは、日本の気候では栽培が難しいものでしたが、様々な栽培法が開発され、日本各地でマンゴーが収穫できるようになりました。
ここでは、マンゴー栽培における特徴的な取り組みをしている地域をご紹介します。
宮崎県
宮崎県は冬も暖かく、日照時間、快晴日数ともに全国トップクラスの記録を持つなど、マンゴー栽培に適した土地柄で、1986年から本格的に栽培が始まりました。
マンゴーは収穫後も追熟するので、輸入マンゴーなどは完熟する前に収穫、輸送し、店頭に並ぶのですが、宮崎県では香りが良く糖度が最高に高くなる完熟での収穫にこだわり、他の産地のものとの差別化を図りました。
しかし、完熟で収穫するのはタイミングが難しく、完熟したマンゴーは自然に枝から落ちてしまいます。
それを防ぐために開発されたのが、完熟間際のマンゴーの1つ1つにネットをかぶせ、完熟して自然落下する実をネットでキャッチする方法です。
北海道
南国フルーツを北海道で生産するというだけでも話題性があるのですが、十勝地方産のマンゴーは、真冬に収穫期を迎えます。
この、「真冬のマンゴー」栽培は2010年より、十勝地方の企業経営者達によって町おこしのために始まりました。
その栽培方法は、寒冷地の生活の知恵を生かしたもので、世界的にみても珍しい「根をコントロール」する方法になります。
まず、マンゴーのハウス内の土中にパイピングを張り巡らせます。
夏場は十勝の冷涼な気候と、冬のうちに貯蔵しておいた雪の冷媒を循環させて地中の温度も低くして、マンゴーの木に冬だと思わせます。逆に冬場は温泉水をパイピングに流すことによって地中を温めるとともに、ヒートポンプでハウス内を加温し、マンゴーの開花、結実を促します。
さらにバイオディーゼル燃料を用い補助暖房として活用することで、化石燃料を全く使用することなく自然エネルギーで栽培する仕組みを確立しました。
また、十勝地域は太平洋型の気候なので冬も好天が続き、ハウス内ではたっぷり太陽の日差しを浴びる事ができるのです。
こうして真冬に収穫された完熟マンゴーは、お歳暮など、年末年始の贈答用として喜ばれています。
和歌山県
温暖な気候で日照時間の長い和歌山県は、マンゴー栽培に適しています。
有田地区では、近畿大学附属農場湯浅農場で1987年からマンゴー栽培研究が行われており、この農場から出荷される「近大マンゴー」は、大手百貨店などで販売されています。
そしてこの農場から、2008年に日本発の新品種「愛紅」が誕生しました。
その他、和歌山県では、ミカン栽培の技術を生かしてマンゴー栽培にも取り組むべく、行政も支援を行っています。
まとめ
世界三大美果と言われるマンゴー。日本各地で栽培、流通させるために様々な取り組みが行われています。
また、今回紹介させて頂いた品種、生産地の他にも、様々な土地で希少品種などを栽培されている農家さんもいらっしゃいます。
色々食べ比べてみて、お好みのマンゴーを見つけてみて下さいね。
指宿市 https://www.city.ibusuki.lg.jp/main/fp/machi/nouchiku/page004681.html 宮崎日日新聞 https://www.the-miyanichi.co.jp/tokushu/category_209/_25665.html 公益財団法人中央果実協会 https://www.japanfruit.jp/ e-Stat特産果樹生産出荷実績調査 https://www.e-stat.go.jp/ 丸果石川中央青果 http://www.maruka-ishikawa.co.jp/fruits/items005/mango.htm 沖縄産マンゴーの県外市場開拓と消費者意識 https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/en 千疋屋 https://www.sembikiya.co.jp/fruit-dictionary オリオンビール https://www.orionbeer.co.jp/story/watta-keittmango/ マイナビ農業 https://agri.mynavi.jp/2018_07_16_33588/ タキイネット https://shop.takii.co.jp/products/detail/NTF149 JA https://www.jacom.or.jp/yasai/news/2013/08/130829-22030.php
参考
国際農研 https://www.jircas.go.jp/ja/database/mango/general-user
タイ、バンコクにて8年間、料理教室コーディネーターなどをしながら、世界各地で料理を学ぶ。
日本帰国後は、タイ料理教室を主宰しつつ、日本の美味しい農産物とアジア料理とのコラボレーション・イベントを企画運営するなど、日本のクオリティの高い食材と出会う活動を行う。また、一児の母としての経験も基に、子ども向け食育ワークショップなどの活動にも力を注ぐ。