桃の特徴
原産地は中国といわれ、古事記や日本書紀にも桃についての記載があるほど古くから栽培されていた記録はありますが、日本国内で多く栽培されるようになったのは明治に入ってから。岡山県で誕生した「白桃」を皮切りに、本格的な栽培が始まりました。
桃はバラ科サクラ属の果実。桜より少し遅いくらいの時期に、桃色の花を咲かせます。
品種によって花粉があるもの、ないもの、少ないものが存在し、花粉がないものや少ないものは、毛ばたきなどを使って人工的に授粉を行ないます。
その後「摘果」と呼ばれる実を間引く作業を何度か行ない、桃を選抜していきます。
収穫する桃が出そろったところで、収穫までの時間が短い一部の品種を除き、袋掛けを行ないます。こうすることで、病害虫の予防や、傷や裂果の防止、強風や強い日差しから保護する効果などが期待できます。
多くの桃の産地では、桃を収穫する2週間ほど前に袋をはずし、畑に反射用のシートを敷きます。これは桃の下にも日光が当たるようにし、全体が色づいた美しい実にするためです。
以前は銀色のものが主流でしたが、最近では通気性の良い白いシートを使うことも多いようです。
岡山の桃が白いワケ
山梨県など、多くの桃の産地では全体が「桃色」に色づいた桃を栽培していますが、岡山県を中心とした一部の地域では「白色」の桃が出回っています。
これは、反射シートを使わず、袋をつけたままの有袋栽培を行なっているためです。こうすることで、皮が薄く、透き通るように白くてなめらかな口当たりの桃になります。
同じ品種なのに、産地によって見た目が全く異なる桃を目にし、不思議に思った経験がある人も多いのではないでしょうか。それにはこういった理由があるのです。
桃の種類
桃の品種は「白鳳系」「白桃系」「黄桃」などに分けられます。
白鳳系
桃のシーズン前半に出てくる品種がほとんどで、数ある白鳳系のルーツといわれる「白鳳」や、その枝変わり品種の「日川白鳳」、早生種の「八幡白鳳」などがあげられます。
繊維が少なくてやわらかい品種が多く、さわやかな甘みがあります。
白桃系
中生種から晩生種の桃の多くがこちらに含まれ、「加納岩白桃」や「浅間白桃」、「川中島白桃」などが有名です。岡山で生まれた「桃の女王」とも評される「清水白桃」もこちらに含まれます。比較的かためのものが多く、日持ちも良いです。
黄桃
主に加工用として多く出回る、果肉が黄色い桃です。
もっとも有名なのは「黄金桃」ですが、それ以外にも「滝ノ沢ゴールド」や「光黄」、「黄貴妃」などがあります。
白い桃と比べると酸味は強めですが、南国フルーツのような芳醇な香りがします。
その他
・ネクタリン
桃の変異種で、桃と違って表面に産毛はほとんどありません。「サマークリスタル」や「秀峰」、「黎明」などの品種があり、果肉は白いもの、黄色いもの、さまざまあります。強い香りと甘みがありますが、酸味も持ち合わせています。桃と比べて種が取れやすいので、簡単にむくことができます。
・ワッサー
桃とネクタリンを交配したフルーツで、1990年に長野県須坂市で生まれました。まだ長野県以外ではほとんど栽培されていません。果肉は比較的かためですが、噛むと口いっぱいに果汁が広がります。
・蟠桃
平たい円盤状の桃です。品種もいくつかありますが、「蟠桃」はその総称です。中国原産で桃の原種に近いものとされています。日本での栽培量はそれほど多くはありません。
選び方・保存方法
くぼんだ割れ目(縫合線)を中心に、左右対称でふっくらと丸みがあるものが良いでしょう。「果点」と呼ばれる表面の白いツブツブはおいしいサイン。中身が熟して亀裂が入っている証拠です。できるだけ果点が多いものを選ぶようにしましょう。
桃の保存は常温が基本ですが、暑すぎるとすぐに熟してやわらかくなってしまいます。直射日光の当たらないできるだけ涼しいところにおきましょう。冷やしすぎると甘みを感じにくくなるので、冷蔵庫に入れるのは食べる1時間~2時間前がおすすめです。
すぐに食べたい場合には、氷水を張ったボウルで30分程度冷やすと良いです。
おいしい食べ方
桃は枝についていた方よりもお尻の方の糖度が高いといわれています。甘さが均等になるようにカットするには、くし形に切りましょう。
味が濃くて最もおいしいといわれているのは皮と果肉の境目の部分。かたい桃なら、皮ごとでも違和感なく食べられます。よく洗って産毛を落とし、皮ごと食べてみてはいかがでしょうか。
簡単アレンジ
桃本来のおいしさを味わうには、そのまま食べるのが1番ですが、時にはアレンジしたいと思う人も多いのではないでしょうか。
少し前に流行った「桃モッツァレラ」には、すももや梨など、他のフルーツを加えると、さらにゴージャスに!
トマトや生ハムと合わせた冷製パスタも、暑い夏にピッタリです。オリーブオイルをたっぷりかけるのがおすすめ。アボカドも合います。
ピザ生地にクリームチーズとカットした桃を乗せて焼けばジューシーなフルーツピザのできあがり。ミントを添え、お好みでハチミツをプラスしても良いでしょう。
また、ジェノベーゼと合わせたお食事ピザもオススメ。塩味と桃の甘さの相性は抜群です。
▼過去の桃のレシピ記事はこちら
まとめ
年間通して入手できるフルーツも多い中、桃が食べられるシーズンは今だけ。今回紹介したのは一部の品種だけですが、他にもおいしい桃はたくさんある上、同じ品種でも産地や栽培方法、生産者様によっても味わいが全く異なります。ぜひさまざまな桃を食べて、短い旬を楽しんでくださいね。
参考
- 桃(JAフルーツ山梨) https://www.ja-fruits.or.jp/fruits/momo/
- 公益社団法人やまなし観光推進機構 https://www.yamanashi-kankou.jp/special/peach_introduction.html
- 農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1905_06/spe2_01.html
- JA岡山県本部 https://www.zennoh.or.jp/oy/product/fruits/peach/
- JA晴れの国岡山 https://www.ja-hareoka.or.jp/specialty/hakutou.php
- 農林水産省統計 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500215&tstat=000001013427&cycle=7&year=20200&month=0&tclass1=000001032287&tclass2=000001032927&tclass3=000001161566&tclass4val=0
工学部卒の元SE。
結婚後、「焼肉屋の嫁が野菜ソムリエっておもしろくない?」という興味で野菜ソムリエプロの資格を取得。その後もフードツーリズムマイスターやフードロスゼロ料理アドバイザーなどの食に関する資格を取得し、現在は自治体等と連携しながら農産物のPRや地産地消の推進、食育活動などを行なっている。