レシピの前に「料理酒」と「日本酒」のお話
練り麹に使うのは、麹と塩、それからお酒です。麹も塩もどんなものでも構いませんが、実はお酒の選び方にはちょっと注意が必要。
「料理酒」と書かれたものには、醸造アルコールや塩など、お酒以外のものが添加されています。たとえばレシピで「料理酒」とあったら、お酒だけでなく3%程度の塩分が入っているものを示します。
また、「日本酒」「酒」「清酒」とあったら、こちらには塩分が含まれていない純米酒を指すことが大半です。つまり、レシピがどんな言葉で書いてあるかで、塩加減が変わってしまうので、注意して読んでみてくださいね。
ここでは純米酒を使います。
まずは使う純米酒を鍋に入れ、煮切っておきましょう。「煮切る」とは、沸騰させてアルコール分を飛ばすこと。これをすることでアルコールくささがなくなり、お酒の旨味とすっきりとした香りだけが残ります。
煮物などにみりんや料理酒を使う場合は、調理中の加熱でアルコールがある程度飛びますが、さっと和えるだけのものやタレを作るなどに使いたいときは、あらかじめ煮切ってアルコール濃度を低くてしておきます。
ただし、煮物などに使うときもアルコール分がゼロになるわけではありません。
日本料理では昔から料理酒やみりんを使う文化がありますから、子どものころからわたしたちもある程度のアルコール分を口にしてきたということ。あまり心配する必要はなさそうですが、意外と知られていないので、アルコール分に注意が必要な方は知っておくとよいでしょう。
日本酒の旨味いっぱいの「練り麹」作り
材料
日本酒(煮切っておく)……700ml
麹(乾燥)……300g
塩……60g
道具
保存容器や琺瑯容器など
殺菌できる消毒薬
(洗剤でよく洗った容器に消毒をしておきましょう)
作り方
1.麹と塩をよく混ぜ合わせる。
2.煮切った日本酒を半量だけ1に入れてよく混ぜ、5分ほど置く。
乾燥していた麹が日本酒を吸い込み、水分がなくなるので、さらによくかき混ぜます。
3.もう半量の日本酒を入れてよく混ぜたら、蓋をして常温に1週間置く。
麹とお酒がまだバラバラの状態ですよね。毎日かき混ぜてようすを見ましょう。
4.一週間たったらできあがり
こちらが一週間後のようす。麹の粒が崩れ、とろみのある練り麹ができました。
使いかけのスプーンを入れたりすると雑菌が繁殖してしまうので、いつも清潔なスプーンで取り分けるようにしましょう。雑菌が入らないよう注意すれば、1年は常温で保存できます。日を追うごとに発酵具合が進んでとろとろになり、旨味はどんどん増していきますが、このままの味で保存したい方は冷蔵庫に入れましょう。
練り麹で作る鶏むね肉のしっとり焼き
練り麹の使い方でおすすめなのが、パサパサしがちな鶏むね肉に使うこと。むね肉1枚を一口大に切ったら、大さじ1程度の練り麹を和えて10分ほど置いておきます。
10分たったらフライパンにむね肉を入れて、蓋をして中弱火で加熱しましょう。しっとりふっくらしたお肉の食感がおいしく、日本酒の甘味と香り、麹のやさしい味が楽しめます。
もちろんもも肉や豚、牛肉などでもおいしくいただけますし、鮭などの切り身を焼くときに塗ってから焼くと、一段と旨味が増します。また、白身魚のお刺身に塗って10分ほど置いてからいただくのもおすすめ。
ブロッコリーやアスパラに練り麹を和えながら炒めたり、きゅうりを漬けておいて即席のお漬物にすることもできます。煮物をするとき、料理酒の代わりにひとさじ入れたり。ぜひいろいろ使ってみてくださいね。
練り麹の材料はこちらから
練り麹を作るのに必要な麹は食べチョクにも出品されています。こちらは、「ササニシキ」を使用した米糀(米麹)です。練り麹を作って、食卓の味の幅を広げてみてはいかがでしょうか。
食のライター・料理家。
書籍や雑誌、webなどで執筆と料理の仕事をしている。アウトドア好きが高じて『メスティンBOOK』(山と渓谷社)、『キャンプでしたい100のこと』(西東社)でアウトドア料理のレシピ監修も行う。『こねこのコットン チアーカフェストーリー』(学研プラス・7/6発売)では、児童向け小説の執筆と、おはなしの中に登場するレシピの開発をしている。5歳と13歳の母。