なぜ、焼き芋は冷やされるようになったのか?
もともと焼き芋は、江戸の町の冬のおやつとして人気を博しました。明治維新から大正時代にかけては、米の値段が上がっても焼き芋は安定して安価だったために、低所得者層の命の綱に。
関東大震災後は、洋菓子人気に押されて焼き芋消費が落ち込み、太平洋戦争が起こるとサツマイモが国の統制品となり、焼き芋屋が消えました。
次の焼き芋ブームは戦後、サツマイモの統制が解除され、リヤカーに芋を焼く道具を乗せて売り歩く、石焼き芋屋さんが誕生してから。
大阪万博前の最盛期には1000人もの石焼き芋屋さんがいたそうです。焼き芋のおいしさは人々から忘れられる事なく、今度は一年中焼き芋が買えるお店が増えてきました。
そして、本題の「冷やし焼き芋」。
サツマイモの品種改良が進むにつれ、ホクホク系やねっとり系、スイーツのような濃厚な甘さのものから、素朴で優しい甘さのものまで、様々な味わいのサツマイモが誕生しました。
その中から「焼き芋にして、冷えてから食べたらまた違った美味しさだった」という品種が、専門店で冷やして提供されようになります。
そして、2018年からはコンビニ大手各社が商品化するまでになりました。
冷やし焼き芋は、私たちの焼き芋愛と、販売方法の進化の過程で誕生したものなのでしょうね。
おうちで作る冷やし焼き芋の作り方
焼き芋専門店やコンビニスイーツとしても販売されている冷やし焼き芋。おうちでも簡単に作ることができます。
〈作り方〉
1.サツマイモをよく洗って、アルミホイルで包みます。
2.魚焼きグリルの弱火か、160℃~180℃のオーブンで 30分~60分、サツマイモが柔らかくなるまで焼きます。(サツマイモの大きさにより、時間は調整してください。)
3.サツマイモを触って柔らかい感触を確かめたら、グリル、又はオーブンが冷めるまで、サツマイモを入れっぱなしにします。
4.更にアルミホイルが完全に冷めるまで置いておきます。
5.密閉袋に入れて冷蔵庫で冷やします。
サツマイモを焼く時に、アルミホイルで包まずにそのまま焼くと、皮がパリッと仕上がりますが、包んだ方がお芋の中心部までしっとりしました。
また、冷蔵庫でなく冷凍庫で冷やし固めてからある程度自然解凍させたものは、濃厚なさつまいもアイスクリームのような食感です。
3~4日以内に食べるのであれば、冷蔵庫へ。まとめて焼いて1か月以内にゆっくり楽しむ場合は冷凍保存がよいでしょう。
冷やし焼き芋に向いているサツマイモの品種
サツマイモには色々な品種があり、甘味が濃厚かさっぱり系か、食感もほくほく系かねっとり系かに分かれます。
冷やし焼き芋に向いているのは、ねっとり系かしっとり系の、甘みが濃厚なもの。安納芋や紅はるか、シルクスイートがおすすめです。
また、サツマイモは貯蔵する過程でデンプンがショ糖などに変化します。甘みが増し、食感もホクホクからしっとり、ネットリしたものに。
この甘みと食感が冷やし焼き芋にも適した状態になるのです。
冷やし焼き芋を使ったアレンジレシピ
冷やし焼き芋をたくさん作ったら、アレンジして楽しむこともできます。
冷やし焼き芋パフェ
〈材料〉
・冷やし焼き芋…適量
・クッキー…適量
・アイスクリーム…適量
〈作り方〉
背の高いグラスに砕いたクッキー、輪切りにした冷やし焼き芋、アイスクリームの順に入れていきます。
冷たいアイスクリームとねっとりしたクリームのような焼き芋に、さくさくのクッキーの食感が楽しいパフェです。
ヨーグルト焼き芋アイス
〈材料〉3人分
・冷やし焼き芋…1本
・プレーンヨーグルト…焼き芋の重量と同量~1.5倍量
〈作り方〉
1.チャック付きポリ袋に皮を剥いた冷やし焼き芋とプレーンヨーグルトを入れて、よく揉みます。
2.袋の空気を抜いて冷凍庫に入れてよく冷やします。
3.食べる前に、程よい固さに自然解凍して、柔らかく揉んでから器に盛りつけます。
さっぱりヨーグルト味と濃厚焼き芋味が混ざり合った、自然の甘さのみのアイスクリームになります。
冷やし焼き芋の濃厚ポテサラ
冷やし焼き芋は、スイーツだけでなくポテトサラダにもなります。
〈材料〉2人分
・冷やし焼きいも…1本
・クリームチーズ…40g
・玉ねぎ…1/4個分
・ヨーグルト…大さじ2
・塩コショウ…適量
・クルミ…20g
・パセリ…適量
〈作り方〉
1.冷やし焼き芋の皮を剥いて2㎝角ほどの角切りにしてボウルに入れます。
2.クリームチーズも焼き芋と同じ位の大きさの角切り、玉ねぎは薄切りにしてボウルに加えます。
3.ヨーグルト、塩コショウを加えたら、全体をざっくり和えます。
4.お皿に盛りつけ、クルミとパセリを散らして出来上がりです。
じっくり焼いて濃厚な味わいのサツマイモの味わいで、ワンランク上のポテトサラダに仕上がります。
まとめ
焼き芋は、もはや秋から冬だけの楽しみにあらず。
夏は、貯蔵によって甘みが増したサツマイモを使って、おいしい冷やし焼き芋を楽しんでみてくださいね。
参考
日本いも類研究会 https://www.jrt.gr.jp/spmini/spmini_eiyo/
千葉県 https://www.pref.chiba.lg.jp/ninaite/network/field-h28/roya-2016-08.html
タイ、バンコクにて8年間、料理教室コーディネーターなどをしながら、世界各地で料理を学ぶ。
日本帰国後は、タイ料理教室を主宰しつつ、日本の美味しい農産物とアジア料理とのコラボレーション・イベントを企画運営するなど、日本のクオリティの高い食材と出会う活動を行う。また、一児の母としての経験も基に、子ども向け食育ワークショップなどの活動にも力を注ぐ。