改めて「かつおぶし」って何?
かつおぶしとは、簡単に言うとカツオを煮て燻製にしたもの。しかし、かつおぶしとひとくちに言っても、部位や製法などによって味わいや香りに違いがあります。
味や香りが変わるポイント
①背中の方の「背節(または雄節)」と、お腹の方の「腹節(または雌節)」がある。
②燻製にしただけの「荒節」と、そこからカビづけした「枯れ節」がある。
③カツオの血合いの部分を抜いたものと、入ったままのものがある。
④「厚削り」「薄削り」「糸削り」と、削り方がさまざまある。
⑤メーカーや問屋、ランクによって違いがある。
初級編1:おだし初心者が買うべきかつおぶし
さて、それではスーパーの陳列棚を思い出してみましょう。大抵かつおぶしは何段かに分かれて、さまざまな種類のものが置かれていますよね。
大袋にどっさり入ったもの、少量に小分けされたパックのもの、細かく削られたもの、厚みがあるもの、安いものも高いもの…
一同に並んでいる中から、普段みなさんはどんなものを買っていますか?
実はこのさまざまあるかつおぶし、全部が同じ味ではありません。つまり、使う用途や好みによって種類を変えることで、よりおいしいごはんを作ることができるのです。
調べたり考えたりするのは面倒!という人も、ぜひこれだけは覚えておきましょう。
「糸削りのかつおぶしで、だしはひけない」
少量パックによくある糸状の細かなかつおぶしは「糸削り」といい、お浸しにかけたりするもので、おだしはひけません。
初めておだしをひくとき、「次もやるかわからないし、小さいパックのものでいっか」といって失敗したわたしが言うのだから、間違いありません。だしをひきたいときは、「花かつお」と書いてあるものを買ってみてくださいね。
初級編2:熱湯を注いでできる「かつおだし」が手軽でおいしい!
それでは早速花かつおを使って、おだしをひいてみましょう。コップ1杯分のおだしなら、花かつおが5gもあれば充分です。
1.花かつおを茶こしに入れて熱湯を注ぐ。
2.2〜3分したら茶こしを上げる。
ひいたおだしは、だし巻きたまごを焼くときに使ったり、調味料を入れて加熱し、即席の麺つゆにしたり、うすくちしょう油をおだしの半量足して、茹でた青菜を浸すのもとってもおいしいですよ。
これだけで、充分にカツオの華やかで上品な香りがするお料理になります。
おすすめは、コップ1杯のかつおだしに、うすくちしょう油を小さじ1/2、塩小さじ1/3ほど入れてかき混ぜただけのお吸い物。二日酔いの日の朝ごはん代わりに、夕方の疲れを落ち着かせる一杯に、パッと作れてホッとできるおだしスープです。
残ったかつおぶしにもまだ旨味がありますから、おしょう油を和えてごはんにのせていただきましょう。
ちなみに、色の薄いうすくちしょう油の方がきれいに仕上がりますが、こいくちしょう油でも構いません。塩分の強さが違うので(うすくちしょう油の方が塩分が強い)、味見しながら塩分の調整をしてくださいね。
上級編1:さらにこだわりたい方は用意したい2種類のかつおぶし
もっとおいしい和食が作れるようになれたらいいなと思っている方は、かつおぶしを2種類買ってみましょう。この2つを料理によって使い分けることで、同じ和のお惣菜でも旨味や香りが変わり、味のバランスがよい献立になります。
荒節
よく見かけるかつおぶしのほとんどはこちらで、パッケージに「花かつお」と書いてあったり、原材料名に「かつおのふし」とあるものは、荒節に属します。
カツオを煮て燻し、乾燥させたものを削ったもので、一ヶ月ほどで出来上がります。
安価で買い求めやすい一方、魚と燻製独特の香りが強く、旨味は少なめです。
枯れ節
原材料に「かつおのかれぶし」とあれば、こちらです。燻したあとに天日干しをしてカビづけし、ふたたび干してカビづけして…と製造工程が長く、最短でも仕上がりまでに半年かかります。
枯れ節は一般的なスーパーではあまり見かけず、百貨店や専門店などで買うことができます。荒節より値が張りますが、料亭でいただくようなやさしく旨味がしっかりあるおだしがひけますよ。
上級編2:原材料表示を見てかつおぶしを選ぼう
荒節・枯れ節の他にも、かつおぶしを選ぶ基準があります。それは、カツオの血合いが入っているか入っていないか、ということ。
他にも、背と腹のどちらの身で作ったかつおぶしがよいかなど、問屋に行くと細かく選ぶことができるので、豊洲に出かけてみるのもよいでしょう。
血合い入りのかつおぶし
一般的にかつおぶしという名称で売られているものには、カツオの血合い(背と腹の間にある赤黒い筋肉のこと)が入っています。
血合い部分にはコクがあり、味も香りも濃厚。味噌汁や麺つゆなど、あとで調味するものには、血合い入りのかつおぶしが向いています。
血合い抜きのかつおぶし
こちらは血合い部分が入っていないかつおぶしで、あっさりした味わいです。品がよくまろやかで、やさしい風味のおだしがひけるので、野菜を炊いたり茶碗蒸しにするのがよいでしょう。雑炊や離乳食など味を薄く仕上げたいものは、こちらで作ります。
かつおぶしは古事記にも登場するくらい昔からあるもの。それだけ深く私たちの生活になじみ、和食の土台を支えてきた食材です。
かつおぶしの製造工程については、鰹節専門店である株式会社にんべんがスポンサードしているドキュメンタリー映画を見るととってもよくわかります。ぜひご覧ください。
食のライター・料理家。
書籍や雑誌、webなどで執筆と料理の仕事をしている。アウトドア好きが高じて『メスティンBOOK』(山と渓谷社)、『キャンプでしたい100のこと』(西東社)でアウトドア料理のレシピ監修も行う。『こねこのコットン チアーカフェストーリー』(学研プラス・7/6発売)では、児童向け小説の執筆と、おはなしの中に登場するレシピの開発をしている。5歳と13歳の母。