日本国内の収穫量75%以上!さくらんぼ王国「山形」
さくらんぼの産地というと、山形県・北海道・山梨県・青森県・秋田県・福島県などがあげられますが、その中でも収穫量・出荷量共に全国の75パーセント以上を占めるのが山形県。
さくらんぼは桜や桃の花が咲く頃とほぼ同時期に白い花を咲かせます。開花時期は品種によって異なりますが、多くの品種は「自家不和合性」という性質を持ち、自家受粉ができません。
このため、多くの生産者は複数の品種を同じ畑で栽培し、毛ばたきなどを使う人工授粉や、ミツバチによる授粉によって受精を行なっています。
世界中では1,300種類以上のさくらんぼが栽培されているといわれ、そのうち日本で栽培されているのは25種類ほど。そのほとんどは山形県でも栽培されており、山形県内で育成された品種も多数あります。
圧倒的な知名度と人気を誇る20世紀最高の品種「佐藤錦」
さくらんぼの代名詞といっても過言ではないのが「佐藤錦」。山形県東根市の佐藤栄助氏が大正11年に育成したもので、山形県内でも栽培面積の約75パーセントを占める代表品種で、「黄玉」と「ナポレオン」を掛け合わせてできたさくらんぼです。
重さは7グラム前後のものが主流で、皮は黄色地に鮮やかな紅色が付いています。果肉はクリーム色で、肉質は柔らかめ。甘味と酸味をバランスよく持ち合わせた品種です。
「佐藤錦」以前のさくらんぼは、酸味が強く日持ちしない品種が多く、輸送途中で傷んでしまうことが多かったようです。
そこで、日持ちはしないが味の良い「黄玉」と、酸味は強いが保存性に優れた「ナポレオン」を掛け合わせることで、十分な糖度を持ち、日持ちが良く育てやすい「佐藤錦」が誕生し、世に送り出されました。
そんな「佐藤錦」は、誕生から100年以上経った今も他を寄せ付けない圧倒的な人気で、「20世紀最高の品種」と言われています。
食べ応え十分!サイズ・糖度共にピカイチ「紅秀峰」
次にご紹介するのは、「佐藤錦」と「天香錦」を掛け合わせてできた山形県生まれのさくらんぼ「紅秀峰」。「佐藤錦」と比べると紅色が鮮やかで、粒が比較的大きめ。10グラム前後のものも多く、時には500円玉サイズに出会えることも。
果肉の色はクリーム色で、肉質がしっかりし食べ応え十分。ジューシーで酸味が少なく、糖度が高いので、酸味が苦手な人やお子様にオススメしたい品種です。
保存性にも優れるため、輸送向きの品種と言えます。また、形もまん丸というよりハートに近いので、プレゼントにもピッタリ。「佐藤錦」に次ぐ人気品種です。
まだまだある隠れた人気品種
「佐藤錦」や「紅秀峰」ほどメジャーではないものの、密かに人気となっている品種をいくつかご紹介します。
「20世紀最高の品種」のベストパートナー「高砂」
アメリカ生まれの品種です。果肉はクリーム色で果汁が多く、硬さは「佐藤錦」と似ています。しっかりとした酸味が感じられ、しつこさのないさっぱりとした味です。
派手さはないものの人気品種「佐藤錦」の授粉樹としてとても相性が良いため、大切に育てられています。
鮮やかな黄色がまぶしいさくらんぼの女王「月山錦」
他の品種とは見た目が全く異なる黄色いさくらんぼ「月山錦」。一見酸っぱそうに見えるかもしれませんが、酸味はほとんどありません。
糖度がとても高く、人気もあるのですが、栽培が難しく、ほとんど市場に出回ることのない、希少なさくらんぼです。
鳥も大好き!あま~いアメリカンチェリー「レーニア」
見た目は「佐藤錦」と少し似ていますが、アメリカ生まれの代表品種です。輸入物が主流ですが、国内でも栽培されています。大粒で肉厚なのが特徴で、強い甘味があります。
しかし、その強い甘味のせいか、収穫前に鳥に食べられてしまうことも多いそうです。
黒赤褐色の大玉チェリー「サミット」
光沢のある黒赤褐色が特徴的な品種です。比較的大玉になることが多く、直径3センチを超える大玉サイズも見られます。
酸味が少なく、肉厚で食べごたえがあります。熟すほど黒色が濃くなります。国内でも栽培されていますが、輸入物が主流です。
さくらんぼはとてもデリケートなフルーツ
さくらんぼの栽培には大きく分けて温室栽培と露地栽培があります。
温室栽培とは、温室で作物を栽培すること。
一方、露地栽培とは、自然環境下に近い形で栽培することです。
露地栽培のものも雨や風を受けながらの栽培ではなく、ビニール素材などの雨よけ屋根の下で育てられていることがほとんど。
これはさくらんぼがとてもデリケートな果物で、水にとても弱いため。雨に当たると果皮に亀裂が入って割れてしまうのです。
また、収穫直前の温度上昇により、熟成が急激に進んで肥大化し、皮が破れてしまうことも。
中にはこんな奇形果もできています。
これらはどちらも規格外。このようなものをどれだけ減らすことができるかは、生産者の腕の見せ所ですね。
さくらんぼの選び方・保存方法
さくらんぼを選ぶ際は、色が均一でつやがあり、濃い色のものがオススメです。軸が鮮やかな緑色をしているものは新鮮な証拠。軸が抜けていたり、茶色くなっていたりするものは収穫してから時間が経っている可能性があります。
デリケートなさくらんぼは急激な温度変化が苦手なので、保存する場合は常温が基本。軸を抜くと水分が抜けてしまうので、付けたままにしましょう。元々鮮度が命のさくらんぼですから、なるべく早く食べ切るようにしてくださいね。
さくらんぼの食べ方
さくらんぼはそのまま食べるかスイーツの彩りとして使うことが定番ですが、種を取って新鮮なうちにジャムやコンポートに加工しておくと、長く楽しむことができます。
以前の記事
「【生食は今だけ!】初夏の旬味「さくらんぼ」で作る自家製ソース&甘酒ヨーグルトムース!」( https://andmore.tabechoku.com/season-recipe_cherry/ )
でもアレンジレシピをご紹介していますので、よろしければチェックしてみてくださいね。
最後に私からはさくらんぼを使ったアレンジ麺をご提案します。夏にピッタリなので、冷涼な気分を感じたい時は是非作ってみてください。
さくらんぼとトマトの和えそうめん
【材料(1人分)】
・そうめん90~100g(お好みの量)
・トマト 1個
・さくらんぼ 8粒
・長ねぎ 1本
・白だし 大さじ1
・ごま油 大さじ1と1/2
・おろしニンニク 小さじ1
・粗挽き黒胡椒 お好みで
【作り方】
1.トマトは2センチ角の大きさに切り、さくらんぼは半分にして種を取る。長ねぎは小口切りにする。
2.ボールに、[1]と白だし、ごま油、おろしニンニクを入れてよく混ぜ、冷蔵庫で冷やす。
3.そうめんを表示時間通りに茹で、氷水(分量外)で冷やして水気を切る。
4.[2]に[3]を入れてよくなじませ、器に盛って長ねぎを乗せる。
さくらんぼというとデザートのイメージが強いと思いますが、主食に使ってみました。
暑い日にピッタリの1品です。この時期はトマトも旬で旨みが乗っており、さくらんぼとの相性は抜群!パスタなどでも応用できますので、ぜひ試してみてくださいね。
まとめ
さくらんぼというと「佐藤錦」しか知らなかったという人もいるのではないでしょうか。
食べチョクでもいろいろな種類のさくらんぼを購入することができますので、食べ比べてみることもオススメです。
初夏のフルーツさくらんぼの旬はごくわずか。是非楽しんでくださいね。
参考
- 令和2年産びわ、おうとう、うめの結果樹面積、収穫量及び出荷量(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/sakkyou_kajyu/biwa_momo_ume/r2/index.html - さくらんぼ品種紹介(山形県)
https://www.pref.yamagata.jp/140032/sangyo/nourinsuisangyou/nogyo/nousambutsu/sakurambo/sakuranbohinsyu.html - さくらんぼの話のタネ(山形県)
https://www.pref.yamagata.jp/140032/sangyo/nourinsuisangyou/nogyo/nousambutsu/sakurambo/tane.html - さくらんぼ(山形県青果流通センター)
https://yamasei2005.com/item-list?categoryId=48560 - 大橋さくらんぼ園
https://www.oh-cherry.com/ - 旬の食材百科 レーニアチェリー
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/fruit/cherry-Rainier.htm
工学部卒の元SE。
結婚後、「焼肉屋の嫁が野菜ソムリエっておもしろくない?」という興味で野菜ソムリエプロの資格を取得。その後もフードツーリズムマイスターやフードロスゼロ料理アドバイザーなどの食に関する資格を取得し、現在は自治体等と連携しながら農産物のPRや地産地消の推進、食育活動などを行なっている。