あさりの語源、産地と旬について
日本各地に貝塚が出来る程、昔から日本人の食に関係の深いあさり。漢字では「浅利」「浅蜊」「鯏」と書き、名前の由来は諸説あります。
干潟を漁ると容易に獲れる、食べられる貝、という事から「食料を漁る(あさる)」という言葉から来ているという説。砂の中にいる貝を「砂利(さり)」と言い、「浅い砂にいる砂利」から「浅利」となった説。
他にも砂に潜っている様を「利(利=土を掘り起こすという意味)」に充てて魚編につけて漢字の「鯏(あさり)」を作ったという説などがあります。
生息域は日本の北は北海道から南は九州・沖縄まで、全国に及びます。漁獲量は平成29年の統計で7,072トン。
そのうち、約50パーセントは愛知県が占めており、「あいちあさり」のマークを商標登録し、PR活動を推進するなど、ブランド化にも力を入れています。
あさりは産卵前に身が肥えておいしくなり、その頃が旬となり、5月の産卵前のいわゆる「潮干狩りシーズン」の3月から5月が旬ですが、関東以南では10月にも産卵するため、9~10月も旬です。
あさりの貝殻を見ると、様々な模様や色をしたものがあることに気付きますが、模様は遺伝によるものが多いそう。北海道産のものは他の地域のあさりの模様と違って、柄が不鮮明で放射模様なのが特徴です。
あさりを買う時に、産地と模様を確認してみるのも楽しいですね。
あさりの砂抜きの方法
あさりを買ってきたら、まずやらなければならない作業が「砂抜き」です。
上手に砂抜きをするコツは、「あさりが生息している環境の、砂がない状態の海に近づける」です。
以下、砂抜きの手順とコツをご紹介します。
1.あさりの殻をこすり合わせて、汚れを落とします。この時に口を閉じないあさりがあったら、そのあさりは死んでいるので取り除きましょう。
2.ボウルかバットに濃度3%程度の塩水を作りザルか網を重ね、そこにあさりを重ならないように入れます。
ボウルかバットにザルを重ねると、あさりが吐いた砂がザルの下に落ちて、再び砂を吸う事がありません。塩水の量はひたひた程度にして下さい。
3.アルミホイルか新聞紙などをふんわり乗せて暗い状態にし、静かで涼しい場所に置いて、スーパーで購入したものなら1時間程度、潮干狩りで獲ってきたあさりなら半日程度で砂抜きが完了します。
夏場の1時間程度なら冷蔵庫に入れておくと安心ですが、あまり水温が低いとあさりも活動しなくなり、うまく砂抜きが出来ないのでご注意を。
4.塩水を捨ててザルの中で更に30分程おいたら、塩水を吐き出させることができます。
あさりの保存方法
砂抜きしたあさりをその日に調理するなら、そのまま使う事が出来ます。
また、スーパーで買ってきたあさりは、ラベルに記載してある日付までなら、塩水に浸けた状態で冷蔵庫で保存します.。
長期保存する場合は、冷凍保存がおすすめです。冷凍方法は、以下のとおりです。
1.砂抜きと、塩抜きの終わったあさりをキッチンペーパーなどで水気を取ります。
2.冷凍出来るチャック付き保存袋にあさりが重ならないように入れて、空気を抜いて袋の口を閉じます。
3.ステンレス製のバットに平らに置いて、冷凍庫に入れます。
コツは、なるべく空気に触れない状態にし、なるべく急速冷凍出来る方法で冷凍する事。賞味期限は約3週間です。
冷凍あさりを上手に使った料理
冷凍あさりを使う時は、解凍せずに凍ったまま一気に過熱調理するときれいに殻が開きます。一度冷凍してから加熱すると、旨味が出やすくなりますよ。
ここでは、冷凍あさりの利点を生かした料理を紹介します。
あさりの味噌汁
鍋で沸騰したお湯に冷凍あさりを一気に入れて火を通せば、出汁いらず、旨味がよく出た味噌汁が出来上がります。
あさりを冷凍しておけば、好きな時にいつでもおいしいあさり汁が味わえるのです。
アクアパッツァ
アクアパッツァの材料は、1種類の魚と貝、そしてトマトと香味野菜です。家に冷凍あさりがあれば、アクアパッツァに最適なお魚を見つけた時に、気軽に作る事が出来ます。
以前、「リストランテ カノビアーノ」開業者の植竹隆政シェフにインタビューした際は、味に奥行きを出したい時にあさりを入れると良いと教えてもらいました。
あさりの旨味は、料理の脇役になっても活躍するのですね。脇役の時こそ、冷凍庫からさっと出して使えるのがポイントです。
まとめ
これまで、潮干狩りでたくさんあさりをとっても「こんなに食べ切れないし、砂も抜けないで食べた時にジャリっとするし…」と思われていた方が、たくさん獲れても大丈夫、と、この記事を読んで思っていただければ幸いです。
これから訪れる潮干狩りシーズン、砂抜きや保存法を覚えて楽しんで下さいね。
また、潮干狩りには行けないけど、獲れたてのあさりが楽しみたい!という方は、インターネットで産地から直接お取り寄せするのもおすすめです。
<参照>
・埼玉県魚市場
https://saitamauoiti.co.jp/season/%E3%82%A2%E3%82%B5%E3%83%AA%E9%AF%8F/
・農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0010/06.html
・愛知県農業水産局農政課
https://www.pref.aichi.jp/nousei/iitomo/clams/
・日本気象協会
https://tenki.jp/suppl/rsakai/2019/03/23/28934.html
・北海道水産林務部水産局水産経営課
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/ske/osazu/oz01fis/fis067.html
・豊洲市場協会
http://www.toyosu-market.or.jp/2020/06/13/1282/
・ニチレイ
https://www.nichireifoods.co.jp/media/11540/
・小学館
https://hugkum.sho.jp/65008
タイ、バンコクにて8年間、料理教室コーディネーターなどをしながら、世界各地で料理を学ぶ。
日本帰国後は、タイ料理教室を主宰しつつ、日本の美味しい農産物とアジア料理とのコラボレーション・イベントを企画運営するなど、日本のクオリティの高い食材と出会う活動を行う。また、一児の母としての経験も基に、子ども向け食育ワークショップなどの活動にも力を注ぐ。