「さよりめし」なのにさんま!?
さんまを使った郷土料理には、さまざまなものがあります。たとえば三重県や和歌山県では、さんまを押し寿司にした「さんま寿司」が有名ですし、さんま漁が盛んな福島県の小名浜では、さんまをすり潰して作る魚のハンバーグのような「ぽーぽー焼き」というものがあります。
今回ご紹介するのは、岐阜県で古くから食べられている「さよりめし」。さんまなのに「さより」と違う魚の名前がついているのが一見不思議ですが、海がなかった岐阜では細長い魚を「さより」と呼んでいたことにはじまります。
このさよりめし、1939年(昭和14年)に宮内庁の全国郷土料理調査で、日本の代表的郷土料理として「日本五大名飯」に選ばれています。(他に、島根県のうずめめしや、大阪府のかやくめし、埼玉県の忠七めし、東京江東区の深川めし。)
秋の収穫を祝っていただく献立だったとか。昔は新鮮な魚が手に入りづらかったので、塩漬けにしたさんまで作られていたといいます。
現在では、さんまを焼いてから炊き込みごはんにする方法と、生のさんまを炊き込む方法があります。今回は、生のさんまをそのまま炊き込んでみました。
さよりめしのレシピ
【材料(3〜4人分)】
さんま……2尾
米……2合
水……360ml
にんじん……1/2本
ネギ……1/2本
料理酒……大さじ2
醤油……大さじ2
【手順】
1.さんまは洗って半分に切り、内臓を取り出す。塩(分量外)を振って10分おく。
2.米を洗い、分量の水に30分浸水させておく。
3.にんじんとネギはみじん切りにする。
4.厚手の鍋にすべての材料を入れて強火にかける。
5.沸騰したら蓋をして弱火にし、12分炊く。そのまま10分蒸らす。
6.さんまを取り出して骨を取って戻し、よく混ぜる。お好みでネギをのせる。
さんまの旨みをしっかり含んだごはんは香りがよく、おかずいらずで夕飯の献立にもおすすめ。ほぐしてから出せば、子どもも食べやすいはず。にんじんやネギの他に、ぎんなんやきのこなど、他の秋の味覚と組み合わせると、より秋らしいメニューになります。
最後に
さんまはここ数年、不漁により価格が高騰しています。温暖化の影響で海水の温度が上がり、さんまが陸地から離れた場所へ移動しているため、漁が難しくなっているという説が有力なのだとか。
今年も漁は厳しいだろうと言われていますが、やっぱり季節に一度は食べたい食材。さんまをいただきながら、環境問題や海で起こっていることにも目を向ける機会にしたいものですね。
食のライター・料理家。
書籍や雑誌、webなどで執筆と料理の仕事をしている。アウトドア好きが高じて『メスティンBOOK』(山と渓谷社)、『キャンプでしたい100のこと』(西東社)でアウトドア料理のレシピ監修も行う。『こねこのコットン チアーカフェストーリー』(学研プラス・7/6発売)では、児童向け小説の執筆と、おはなしの中に登場するレシピの開発をしている。5歳と13歳の母。