日本のバナナ栽培の歴史
バナナは東南アジア原産の、バショウ科の植物です。
赤道の南北ほぼ30度内に主な産地があり、「バナナベルト地帯」とも言われています。
日本では、小笠原諸島の父島に1830年代にハワイからバナナが渡ってきて以来、バナナ栽培が盛んになりました。明治時代後期から大正時代には、本州に向けてバナナを積んだ船が行き交っていたそうです。
それが、明治36年から始まった台湾産バナナの輸入開始を皮切りに、外国産バナナの大量流通によって生産者が減っていきました。
沖縄では小笠原からバナナが渡ってきて以来、民家の庭先などに植えられ、沖縄の盆に欠かせないものとして親しまれるようになります。しかし、こちらも生産量が少なく安定しないために、島外に流通することはほとんどありませんでした。
現在では、トロピカルフルーツ栽培技術が発達。また、消費者も国産トロピカルフルーツに注目し始めた事により、沖縄や小笠原だけでなく、日本各地でバナナが生産されるようになっています。
外国産と国産バナナの違い
商品によってはスーパーでひと房100円などで売っているのに対して、1本につき数百円の価格帯で販売されている、国産バナナ。
その違いは何でしょうか?
完熟で収穫し、流通できる
外国産バナナは、未熟なうちに収穫され、保冷船で3日~3週間かけて日本にやってきます。
その後、保税倉庫に移され、通関、検疫を済ませ、追熟させた後に日本の店頭に並びます。
それに対して国産バナナは、樹上で完熟させ、糖度が最も高くなったタイミングで収穫、出荷、消費者に届ける事が可能です。
農薬の使用を控えた栽培方法の実現
外国産のバナナは、検疫を通す上でポストハーベスト(殺菌剤・防カビ剤)が必要となりますが、国産バナナにはその必要はありません。
また、栽培技術の向上によりハウス栽培で北海道産バナナも生産できるようになっています。ハウスなら虫の侵入が防げるというハウス栽培のメリットを生かして、農薬の使用を控えて栽培したバナナが出荷できるようになりました。
そうして収穫されたバナナの中には、皮まで美味しく食べられるものも販売されています。
国産バナナの品種おすすめ3選
バナナの種類は世界中で300種類以上ありますが、今回は特に国産バナナのおすすめ品種を3種紹介させて頂きます。
小笠原種
日本の在来種で、皮が薄く、もっちりとした、クリーミーな味わいで、香りが良いのが特徴です。
この在来種が小笠原諸島から沖縄に渡り、「島バナナ」として家庭用として親しまれてきました。
三尺バナナ
世界中で最も流通量の多い品種、キャベンディッシュの一種で、果形は小振り、食味はねっとりとしていて、やや酸味のあるバナナ本来の味わいが特徴です。
グロスミッチェル種
バナナが高級品であった50年以上前に主流だった品種です。
土壌中のカビの一種「フザリウム」によって、バナナが枯れてしまう「パナマ病」の影響で一時は絶滅の危機に瀕していた「幻の品種」。香り高くさっぱりした甘みが特徴です。
その他、日本で栽培されている品種は、アップルバナナ、アイスクリームバナナ、アケビバナナなど様々な品種があります。
国産バナナ栽培に貢献している新農法
明治、大正時代には、国産バナナが流通していたものの、輸入品が大量に入ってきたことにより、衰退していた国産バナナ栽培。
現在は今や北から南まで、日本各地で生産できるようになりました。そのバナナ栽培の新技術を紹介します。
凍結解凍覚醒法
氷河期を乗り越えた植物の力に着目した新農法で、一度バナナの種を長い時間をかけながら冷却した後に長い時間をかけて解凍し、栽培収穫する方法です。
この方法で育ったバナナの苗は、耐寒性がつき、成長速度が速まり、実ったバナナの糖度も普通のバナナよりも高くなります。
岡山県エコタンファームの「Draine(ドレーヌ)」、三重県、鹿児島県の「ともいきバナナ」のほか、宮崎県などでもこの農法でバナナが栽培されています。
温泉熱利用栽培
耐寒性が増したとはいえ、バナナは気温15度以下になると仮死状態になります。
それが今、東北地方や北海道でもバナナが栽培されているのは、温泉熱を利用したハウス栽培技術のお陰です。
バナナのハウスの内に温泉水が循環するパイプを配管してハウス内を暖め、ボイラーと併用し、冬でも室温を15度以下にならないよう保ちます。
山形県の「雪バナナ」や岐阜県、飛騨高山の「奥飛騨ファーム」のバナナが、温泉熱を利用して育ったバナナです。
まとめ
輸入バナナの品種のほとんどがジャイアント・キャベンディッシュです。いつものバナナと違う品種を試したい、皮ごと食べてみたい方は、国産バナナを是非お試し下さい。
また、バナナは苗も販売されており、温かい室内でプランター栽培をすることも可能です。上手に育てると、自宅で「国産バナナ」が収穫できるかもしれませんよ。ぜひ、注目してみてください。
参考
金沢中央卸売市場 https://www.kanazawa-market.or.jp/Homepage/index.html
日本食糧新聞社 https://news.nissyoku.co.jp/hyakusai/takagi20100220040130849
JA東京中央会 https://www.tokyo-ja.or.jp/farm/edomap/tousyo02.php
コロカル https://colocal.jp/news/21515.html
バナナの足研究会 https://sites.google.com/view/brnj/japanese
バナナ大学 https://www.banana.co.jp/basic-knowledge/
マイナビ農業 https://agri.mynavi.jp/2021_09_01_168091/
農水省 https://www.maff.go.jp/hokkaido/kushiro/photorepo/banana.html
毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20180512/gnw/00m/040/000000c
内閣府沖縄総合局 http://www.ogb.go.jp/
サンフルーツ http://www.sunfruits.co.jp/gallery/
タキイネット http://www.sunfruits.co.jp/gallery/item/?f=ba0003#
DOLE https://www.dole.co.jp/special/banana_history/leader/fukuoka.html
JA全農 https://www.zennoh-weekly.jp/wp/article/4111
J-net21 https://j-net21.smrj.go.jp/special/news/ffsr28000000237x.htm
農業法人DTファーム http://mongeebanana.com/
奥飛騨バナナ https://www.okuhidabanana.net/
タイ、バンコクにて8年間、料理教室コーディネーターなどをしながら、世界各地で料理を学ぶ。
日本帰国後は、タイ料理教室を主宰しつつ、日本の美味しい農産物とアジア料理とのコラボレーション・イベントを企画運営するなど、日本のクオリティの高い食材と出会う活動を行う。また、一児の母としての経験も基に、子ども向け食育ワークショップなどの活動にも力を注ぐ。