和紅茶の歴史
「和紅茶」というと、最近作られ始めたように思われますが、「国産紅茶」は明治時代から作り始められていました。
海外輸出用の紅茶を生産すべく、日本政府が後に「日本紅茶の祖」と言われることになる多田元吉をインドに派遣。多田元吉は今までに日本での製造に失敗していた中国式と変わるインド式の紅茶づくりを学び、日本の風土に合いそうな品種の茶の木の種を持ち帰りました。
こうして日本に伝授された紅茶。
製法を広めるべく、内務卿大久保利通の号令で国内各地に 「紅茶伝習所」が設置され、製法を学んだ人々が輸出用の紅茶を生産し、最盛期の昭和初期には年間5000トンもの紅茶が生産、輸出されていました。
そんな日本産の紅茶生産は、第二次世界大戦を境に激変します。第二次世界大戦以降の紅茶産業は、国内の緑茶嗜好や、海外の安い紅茶に押されて衰退の一途を辿りました。
一時は日本紅茶の品種も「幻の品種」となりましたが、これからご紹介する「べにふうき」の登場を境に、輸出用でなく日本人が楽しむ「和紅茶」ブームに火がつきます。
そして近年、志を持った生産者が増えていき、2002年からは「全国地紅茶サミット」が開催されるようになるなど、和紅茶を愛する人の輪が広がっています。
和紅茶の種類と特徴
茶の木はツバキ科ツバキ属の常緑樹で、原産地はインド、ベトナム、中国と言われています。そして、その広い原産地により「アッサム系」と「シネンシス系」とに分けらます。
アッサム系はインド種とも言われ、紅茶の渋み成分にもなるタンニンが多く含まれるために、主に紅茶になる種類。シネンシス系は中国種で、繊細な香りで日本では緑茶になる種類です。
冬が寒い日本では、アッサム系よりも耐寒性の強いシネンシス系の茶の木の栽培が主流となりますが、日本の気候に合わせて紅茶向けに作られた品種もあります。
そして現在、紅茶用として栽培されている主な茶の木は、以下の種類になります。
べにほまれ
多田元吉がインドから持ち帰ってきた種をもとに作られ、大正時代から栽培されてきた、紅茶用の品種です。
輸出用にもかつては盛んに栽培されていました。色が美しく、重厚感のある味わいが特徴です。
べにひかり
日本のアッサム系である「べにかおり」と中国から導入された「寧州県1号」を交配させた品種。
比較的渋みが少なく、中国茶にも似た雰囲気の香りが特徴です。耐虫性も強いので、無農薬栽培にも適しています。
べにふうき
アッサム系「べにほまれ」とダージリン系「枕Cd86」を交配し1993年に命名、農林登録された品種です。香りがふくよかで味わいが強いという特徴。
実はこの品種、1965年に誕生していたのですが、1971年の輸入自由化をきっかけに外国産紅茶が大量に流通するようになり、生産者が激減します。
静岡県、鹿児島県の一部で細々と受け継がれてきたという、登録前までは「幻のお茶」でした。
世にお披露目されるや否や、各方面から注目され、ロンドンで開催される食品コンテスト「グレード・テイスト・アワード」では最高評価の三つ星金賞を受賞しています。
これらの紅茶用の品種の他にも、日本在来種から紅茶用に選抜された品種や、緑茶用の品種を紅茶に仕上げたものなど、様々な香りと風味の和紅茶が流通しています。
和紅茶の主な産地
和紅茶は緑茶用の茶葉からも作ることは出来ますが、紅茶用の品種は、以下の産地が有名です。
静岡県
静岡県といえば「お茶どころ」として全国的に有名ですが、紅茶についても同じで、紅茶産出額の39%を静岡県が占めています。
更に、静岡県は歴史的に和紅茶にとって重要な地でもあります。
多田元吉がインドから持ち帰った茶の木の種から育った子孫が、静岡市駿河区の丸子で栽培され続けていたのです。
鹿児島県
気候などの栽培条件がべにふうきの栽培に最も適していると言われているのが鹿児島県です。
その地の利を生かしてお茶農家、県、県経済連、JA、研究機関、メーカー等が一体となり、「べにふうき育成会」が発足。生産体制を整え、販路拡大すべく官民の連携を強めています。
その他、佐賀県、三重県、埼玉県など、日本各地のお茶の産地で、和紅茶生産について熱意ある生産者さん達によって、こだわりの和紅茶が生産されています。
まとめ
和紅茶というと、「日本の気候に合ったマイルドで繊細な味わい」、「渋みが少なくまろやかな口当たり」と総評されます。
産地や品種、生産者さんによって、香りも味わいも違ってきます。お気に入りの和紅茶を見つけて、ティータイムを楽しんで下さいね。
参考
富津市 https://www.city.futtsu.lg.jp/0000002685.html
静岡県 http://www.pref.shizuoka.jp/j-no1/m_tealeaf.html
東京都公文書館 https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/01soumu/archives/0703kaidoku_05_2.htm
日本紅茶協会 https://www.tea-a.gr.jp/knowledge/tea_history/
マイナビニュース https://news.mynavi.jp/article/20120822-ryokoshizuoka/
農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2204/spe1_03.html
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/saisei/honbu/pdf/05-02tya.pdf
キリンホールディングス https://museum.kirinholdings.com/history/tea/story1c.html
農研機構 https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/files/vegetea051209-1-7.pdf
https://www.naro.go.jp/training/files/reformation_txt2013_b37.pdf
https://www.naro.go.jp/publicity_report/season/029702.html
農水省データベース https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010001232
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010001259
静岡県立大学 https://dfns.u-shizuoka-ken.ac.jp/labs/tsc/pdf/1910_kocha.pdf
枕崎市 https://www.city.makurazaki.lg.jp/soshiki/nousei/324.html
タイ、バンコクにて8年間、料理教室コーディネーターなどをしながら、世界各地で料理を学ぶ。
日本帰国後は、タイ料理教室を主宰しつつ、日本の美味しい農産物とアジア料理とのコラボレーション・イベントを企画運営するなど、日本のクオリティの高い食材と出会う活動を行う。また、一児の母としての経験も基に、子ども向け食育ワークショップなどの活動にも力を注ぐ。