地ビールとは、どんなビール?

ビールの歴史

ビールの発祥は紀元前4000年。その後、中世ヨーロッパでは修道院で作り継がれ、産業革命で生産量、消費量が格段に増え、今も世界中で愛されています。

 

日本では、江戸時代に蘭学を通じてビールの製造方法が持ち込まれました。幕末の蘭学者川本幸民が日本人で初めてビールを醸造したと言われています。

 

 

明治時代からビール醸造所が各地に作られビール会社が次々に誕生しましたが、次第に大手ビール会社に製造が集約されていきました。

 

1994年までの酒税法では、ビールの製造免許が取得できるのは年間生産量が2000キロリットル(大びん換算で約316万本)以上の事業者とされていました。

 

これにより大手メーカーにしかビールの製造販売はできなかったのが理由です。

 

 

1994年に酒税法が改正され、このビール製造免許の基準が年間60キロリットルに引き下げられたため、小規模事業者がビールを製造出来るようになりました。

 

このような小規模事業者が製造販売するビールを「地ビール」と言います。

 

クラフトビールとは

また、「地ビール」という言葉と共に、「クラフトビール」と言われるビールも最近よく見かけますが、これらのビールの違いは明確にはありません。

 

一般的には、地方の特色を強く出したビールが「地ビール」と言われ、丁寧に仕込んだ「クラフト(職人技)」を特色にしたビールを「クラフトビール」と呼ぶようです。

 

日本の小規模醸造所のビールには、国際的なコンペティションで高い評価を得ているものが多数あります。

 

地ビールそれぞれの特徴

 

万人に好まれる味を製造する大手メーカーに対し、小規模な醸造所ならではの独自の特色を楽しめる地ビール。

 

その味わいを左右するポイントは、材料と製造方法にあります。

 

地ビールの材料

ビールの基本的な原材料は、麦芽、ホップ、酵母、水の4種類。

 

▼麦芽

麦芽は「モルト」とも言い、麦を発芽させ、胚乳部がデンプンになることで発酵しやすくさせます。

 

その発芽後の成長を止める為に乾燥や焙煎するのですが、この時の温度によってビールの風味や色の濃淡が違ってきます。

 

▼ホップ

ホップはハーブの一種で、受粉前の雌花のみを使用します。

 

酵母としての働きがあり、苦味と香りを付け、雑菌の繁殖を抑える効果があります。

 

最近よく見かける「IPA」は、大量にホップを使ったビールです。

 

▼酵母

酵母は、糖質をアルコールと炭酸ガスに分解して「発酵」させる菌の一種です。

 

 

これら材料と水を含めた4つの基本原料以外にも、風味や味わいを調整するために、トウモロコシや米などが加えられたり、各種スパイスや、果物などで香りや風味を加えたビールもあります。

 

製造方法の違い

ビールは、酵母の種類によって大きく上面発酵・下面発酵・自然発酵の3種類の方法の醸造方法で作られています。

 

▼上面発酵ビール

発酵が進むにつれ泡と一緒に液面に浮かび上がる性質をもつ上面発酵酵母を使用したもの。

 

常温に近い温度で3~4日かけて発酵させて作ります。

 

このようにして作られた「エール」と呼ばれるビールは、上面発酵のビールで、豊かな香りと深い味わいが特徴です。

 

▼下面発酵ビール

発酵が進むにしたがって沈下していく仮面発酵酵母を使い、低温で時間をかけて発酵させたもの。

 

「ラガー」と言われる種類で、味のキレがあり、すっきりした飲みごたえが特徴です。

 

▼自然発酵ビール

空気の中に存在する野生酵母の力で発酵させるビールで、最も古典的な製法です。

 

 

この他にも、製造方法の違いによって様々なビールの味わいを楽しめます。

 

例えば、出来上がったビールをろ過して酵母を取り除くと、味わいも見た目もクリアなビールに、無濾過で瓶詰めされたビールは、にごった見た目で、酵母の香り豊かな、味わい深いビールになります。

 

気分で選ぶ!オススメ地ビール

地ビールの選び方のポイントをまとめました。

 

・すっきりしたビールで、喉ごしを楽しみたいとき

→ラガータイプの、ろ過ビール

 

・ホップや酵母の味わいをゆっくり味わいたいとき

→エールタイプの、無濾過ビール

 

・苦みが苦手だけれど、ビールを楽しみたいとき

→フルーツなどの風味を利かせたビール

 

・ビールの苦みやホップの香りをより楽しみたいとき

→IPAビール

 

こだわりの材料や製造方法の違いなどから、気分に合わせて飲み分けてはいかがでしょうか。

 

各地方の特徴的な地ビールのご紹介

 

酒税法が改訂された1994年前後は、元々50に満たなかったビール製造免許場は、2022年の統計では550か所にまで増えました。

 

そして、それぞれの醸造所が麦の種類、焙煎の状態、ホップの量から醸造方法など、各自のレシピに基づいたビールを作っています。

 

今回はその中から、地方の特徴を生かした地ビールをご紹介します。

 

エチゴビール・こしひかり越後ビール

全国の地ビール第一号を作ったメーカーです。

 

特に特徴的な点は、米どころの新潟らしく、コシヒカリを使った地ビールがあることです。

 

すっきりしたのど越しで切れのある辛口ビールで、和食と相性が良いです。

 

遠野醸造・遠野醸造缶ビール

岩手県遠野市で作られる地ビールです。

 

ここは、ホップの栽培の歴史が50年以上、栽培面積日本一を誇り「ホップの里」と呼ばれています。

 

現在も、地域が一丸となって「ホップとビールの町」を目指した町づくりに取り組んでいます。

 

遠野産ホップ農家や町おこしを応援する意味で購入されるのも良いでしょう。

 

OKD KOMINKA BREWING・フィグ イチジク ヴァイツェン

江戸時代から続く木綿産業の活気が、昭和初期から失われつつあった愛知県知多市の岡田地区。

 

ここで、町の活性化のために作られた醸造所をご紹介します。

 

特に、地元産のフルーツの風味を利かせたビールが特徴的で、ビールが苦手だった人にも飲みやすいと人気です。

 

特にイチジクのビールは、地ビールの全国大会「ジャパン・グレート・ビア・アワーズ2021」で金賞を受賞しました。

 

まとめ

1994年から「地ビールブーム」で増えていった小規模ビール醸造所は、2000年頃には数が減った時期もありました。

 

しかし2019年頃から「クラフトビール」と名前を変えて、今ではビール人気を盛り上げています。

 

4月23日は、地ビールの日

 

お住まいの地域の近くでお気に入りの地ビールを見つけたり、丁寧な作り手のクラフトビールを取り寄せたりする人も多いそうです。

 

ぜひ、フルーツやスパイスの特徴を生かしたビールの飲み比べなど、様々な方法で地ビールを楽しんでくださいね。

 

参考文献

全国地ビール醸造者協議会 http://www.beer.gr.jp/local_beer/

国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/sake/tmcpr2/beer.php

サントリー https://www.suntory.co.jp/customer/faq/001716.html

キリンビール https://museum.kirinholdings.com/history/nenpyo/bn_01.html

株式会社鈴廣蒲鉾本店 https://www.kamaboko.com/column/beer01/

よなよなエール公式ウエブサイト https://yonasato.com/ec/craft_beer_material/

全国地ビール醸造者協議会 http://www.beer.gr.jp/local_beer/

ビール女子 https://beergirl.net/beer-beginner-guide-03_c/

ビール酒造組合 https://www.brewers.or.jp/tips/type.html

CRAFT BEER LIFE https://craft-beer.life/dictionary/5734

日本農芸化学会誌 https://www.jstage.jst.go.jp/article/nogeikagaku1924/47/5/47_5_333/_article/-char/ja/

Always love beer https://www.alwayslovebeer.com/craftbeer-microbrewery-brewpub/

エチゴビール https://echigobeer.com/about.php

日本財団ジャーナル https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2020/42598

遠野醸造 https://tonobrewing.com/

Nippon.com https://www.nippon.com/ja/news/fnn20220228309129/

 

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