美味しいワインは美味しいぶどうから生まれる。
渋みや酸味、口いっぱいに広がるその香り。
ぶどうの品種や産地の違いによって、奥深い様々な味を楽しめる大人の飲み物・ワイン。
ワインはぶどうの糖分を直接発酵させるので、穀物を原料とする日本酒やビールとは異なり、基本的に仕込み水として、水は用いません。
つまり、原料となるぶどうの品質がそのままワインの品質になるのです。
そんなワイン作りにおいて、重要なワイン用ぶどうとは一体どのように栽培されているのか、そして生食用のぶどうとの違いは何なのか……?
今回は、ワインが仕込まれるまでの流れを、奈良県で初のワイナリー設立に挑戦する、木谷ワインさんの元で、筆者が収穫体験をしながら伺いました。
ワインぶどうの収穫へ
ワインぶどうの収穫時期は、8月~9月上旬。日差しが強くからりとした晴天の中、木谷さんが所有する畑の内2か所のぶどう収穫へ向かいました。
■一日のスケジュール
8:00~ 第1畑のぶどう収穫
11:00~ 第2畑のぶどう収穫
15:00~ ぶどうの仕込みへ
車で畑に到着すると、ずらりと並ぶぶどうの姿が。
収穫用のハサミをお借りし、早速さやとぶどうの間を切り離していきます。
「今年は収穫前の7月頃から晴天が続いた為、品質の良いぶどう作りに成功しました」
そうおっしゃる木谷さん。
ぶどう作りにおいて重要なのは、降水量と土壌の排水性、日照時間、そして気温などの自然条件。
特に収穫前に雨が多いと、根から必要以上の水が吸収され、実が水っぽくなってしまいます。
木谷さんに許可をいただき、ぶどうを一口…いただきます!
確かに果実は甘味がギュッと凝縮され、濃い香りが。
また、食用のぶどうに比べ、種と皮がしっかりしているのがわかります。
ワイン造りでは、このぶどうの皮と種が重要とのこと。
皮に含まれるアントシアンが赤ワイン特有の色味を生み出し、種に含まれるタンニンがワインに欠かせない苦味・渋みになるのです。
暑い中の作業なので、適宜水分補給や休憩を挟みながら、カゴいっぱいにぶどうを集めていきます。
▲ぶどうがつぶれてしまうので、重ねるのは2段まで
選別作業へ
収穫がひと段落すると、次は選別作業です。
果汁の質に悪影響のある、虫食いや腐っている実、未成熟な実などが房に残っていないか丁寧にチェックしていきます。
▲一つ一つ手作業で。とても根気のいる作業です。
ここで収穫されたぶどうは醸造所へ運ばれ、ワインへと生まれ変わります。
ワインの仕込みへ
ぶどうはバナナやメロンのように追熟しない果物。
そのため鮮度は、収穫した直後から少しずつ落ちていきます。
この鮮度な香りと味をそのまま閉じ込めるため、収穫したらその日中に仕込み作業を行います。
▲憧れの足踏み作業!体重の軽い人がぶどうをつぶす作業を行うと、皮や種がつぶれにくく、余計な渋みが出るのを防ぐことができるそうです。
醸造方法のこだわり
果汁を絞る作業が終わると、次は酵母を用いて発酵させ、お酒にしていきます。
ワインの醸造に使用される酵母の種類は大きく分けて「自然酵母」と「選抜酵母」の2種類。
「選抜酵母」とは、ワイン作りの為に純粋培養された酵母のことであり、安定した味を生み出すことができます。
一方「天然酵母」とは、ぶどうの皮や自然界に存在する野生の酵母のことです。
前者と異なり、その場にいる数種類の酵母によって発酵が進められる為、味に深みやその土地特有の味が生み出されます。しかし、自然の影響を受けやすく、醸造が難しいという欠点もあります。
木谷ワインでは、昨年から自然酵母を使って醸造が行われています。
昨年2019年度は、仕込みや収穫時期を変え10種類のワインを醸造したとのこと。
今年は昨年以上に種類を増やし、その味の違いを楽しめるそうです。
そんな木谷さんの2020年度のワインは11月頃から販売予定です。今から出来上がりがとても楽しみですね。
▲山野辺Blance2019。奈良県天理市産のデラウェア
100%で作られたワイン。
今回お邪魔した木谷ワインさんは、初のワイナリー設立に挑戦するだけでなく、奈良県全体をワインで盛り上げる為に様々な取り組みを行われています。
KITANI WINE~奈良で生まれたぶどうを奈良でワインに~
代表:木谷一登さん
https://narawine.com/
滋賀県出身。管理栄養士・フードコーディネーター。「頑張る人たちを食で支えたい。毎日の小さな幸せを届けたい。」の思いを形にするべく、働きながらレシピ作成やライターとしても活動中。食と旅行が大好きな人。