なぜ、塩の種類によって味わいが違うのか?
私たちが料理などで使っている塩は岩塩なども含めて、海水が原料です。海にはナトリウム以外のカリウム、カルシウム、マブネシウムなどのミネラル分が含まれています。
そういった複数のミネラル分が結晶化するため、さまざまな形や味わいの塩が生まれるのです。
塩の製法の違いと日本の塩づくりの歴史
塩というと、海水を乾かして作る海塩を思い浮かべると思いますが、世界中の塩の生産量の割合としては、実は岩塩などを原料とした塩が2/3を占めます。
岩塩は、5億年から200万年もの昔に地殻変動で海が陸地に閉じ込められ、長い年月をかけて塩分が結晶化し、更にその上に土砂が堆積して出来たと言われています。
海塩の作り方は、広い土地のある諸外国では、海水を陸に引き込んで1~2年放っておいて水分を蒸発させて塩の結晶を採る製法があります。
日本はというと、それ程広い土地もなければ、乾燥した気候でもありません。
日本最古の塩の生産法は、海藻を焼いた灰に海水を混ぜて濃度の高い塩水を作り、それを煮詰めて塩を作る「藻塩焼き」という方法でした。
そこから、干した海藻に海水を掛けては乾かすことで濃度の高い塩水を作り、土器に入れて煮詰めるという方法に発展してきたようです。
その他、水が染み込まないように固めた「塩浜」に海水を撒いてて天日乾燥させ、塩分をたくさん含んだ砂を作った後、海水で洗って砂を洗い落とし、残った塩水を釜屋と呼ばれる小屋で煮詰める方法が、平安時代から続けられています。これを「揚げ浜式塩田」といい、今でも能登半島で行われています。
また、「入浜式塩田」という方法も。室町時代辺りには、それまで人力で海水を撒いていたのが、潮の干満差を利用して塩田に海水を引き込む製法が編み出され、これにより海水を汲み上げる労力が要らなくなりました。
現代は、イオン交換膜と電気エネルギーを利用して海水の塩分濃度を高め、真空蒸発缶で煮詰める「イオン交換膜製塩法」ができ、広大な敷地も必要とせず、安定的に純度の高い塩が作る事ができるようになりました。
こうして日本において、塩田のある風景は、ほんの一部の地域でしか見られなくなりました。しかし、今も日本各地に「塩浜」「塩原」「塩田街」など、塩にまつわる地名が残っています。
散歩や旅行の際に、地名を読んで昔の塩田風景に思いを馳せてみるのも楽しいでしょう。
塩の種類別、おすすめの使い方
塩の産地と製法の違いが分かったところで、どの種類の塩をどのように使うと良いのでしょうか?今回はよく目にする塩の種類別に、おすすめの使い方を紹介します。
粗塩(おにぎり、漬物、あっさりした料理)
海水を濃縮して作られた塩で、海のミネラル分を含んでいるため、複雑なうまみがあります。
粒の大きさも色々ありますが、細かいものならおにぎりを握る時に使ったり、粒が大きめのものは、カツオのたたきに乗せて食べてみるのも良いでしょう。
焼き鳥や焼き魚の振り塩も、粗塩を使います。
岩塩(サラダ、肉料理、スイーツ)
岩塩は、海水が地殻の変動などで陸地に閉じ込められ、ゆっくり結晶になったものです。
元々の海水のミネラル分やその土地ごとのミネラル分が含まれており、まろやかな味わいがあります。
ミネラル分の色素によって、ピンクや黒っぽい色から透明なものまで、さまざまな種類の岩塩があります。
塩辛さがないので、例えば茹でたじゃがいもにかけたり、サラダのドレッシングに使ったり、また、ステーキなどの肉料理に使うといいでしょう。
あとは、スイーツの甘味を引き立たせるアクセントにしても、塩の角が立たずに使えます。
焼き塩(天ぷら、フライトポテト)
海の塩に更に熱を加えてサラサラにした塩です。べたついていないので、均一にかけられる利便性とまろやかな味わいが特徴です。
フライドポテトにかけたり、焼き魚や肉を焼くときの下ごしらえにも便利です。
天ぷらを塩で食べるときでも、ちょんとつけてもつきすぎず、カレー粉や抹茶塩など、他の粉末と混ぜても混ざりやすいです。
まとめ
なかなか普段注目されない「塩」。この機会に、使い分けの仕方や歴史等に触れて、ぜひ親しんでみてください。
<参照>
・伯方の塩
https://www.hakatanoshio.co.jp/trivia/about-salt.html
・公益財団法人 塩事業センター
https://www.shiojigyo.com/siohyakka/made/
https://www.shiojigyo.com/siohyakka/made/rock.html
・たばこと塩の博物館
https://www.tabashio.jp/collection/salt/s9/index.html
https://www.tabashio.jp/collection/salt/s13/index.html
・日本海水
https://www.nihonkaisui.co.jp/small_customer/learning_salt/Japanese_salt
・味の素
https://www.ajinomoto.co.jp/honjio/seiho.html
https://www.ajinomoto.co.jp/honjio/lineup.html
タイ、バンコクにて8年間、料理教室コーディネーターなどをしながら、世界各地で料理を学ぶ。
日本帰国後は、タイ料理教室を主宰しつつ、日本の美味しい農産物とアジア料理とのコラボレーション・イベントを企画運営するなど、日本のクオリティの高い食材と出会う活動を行う。また、一児の母としての経験も基に、子ども向け食育ワークショップなどの活動にも力を注ぐ。