くるみの基本情報
くるみはくるみ科くるみ属の落葉高木で、北半球を中心世界各地に生育しています。「世界最古の食用ナッツ」とも言われていて、紀元前7000年には食べられていたそうです。
原産地はイランで、地中海を渡ってヨーロッパに伝えられたものは「ペルシャグルミ」と呼ばれています。
日本でも縄文時代前期からくるみが食べられていました。
くるみの木は、1本の木に雄花と雌花が咲く「自家結実性」で5月頃に開花、8月下旬に緑色の分厚い皮で覆われた実をつけます。
9月下旬頃から緑色の皮が割れ始め、私たちがよく見る「くるみの殻」が見えたら収穫です。収穫期は9月下旬から10月中旬。
地面に落ちたものの外皮を取り除き、洗浄後、乾燥させたものが出荷されます。
くるみの木は大木になり、樹高が5メートルから20メートルに成長し、実を楽しむだけでなく、家具用の木材としても人気です。
日本にあるくるみの種類とその特徴
現在、主に日本で栽培されているくるみの種類は以下の通りです。
オニグルミ
日本固有種のくるみです。殻の表面の模様が鬼の顔に見えることからこの名前がついたそうです。殻が非常に硬いのが特徴。
ヒメグルミ
日本固有種で、オニグルミの変種。殻の表面がオニグルミと違って平たくツルリとしていて、殻が割りやすい事が特徴です。
テウチグルミ(カシグルミ)
原産地の西アジアから中国、朝鮮半島を経て江戸時代中期に持ち込まれた品種。
日本固有種の2種よりも殻が薄めで「手で割れる」ことから「テウチグルミ」、また、製菓用の「菓子グルミ」という2つの名前を持っています。
シナノグルミ
明治時代にアメリカより持ち込まれた西洋グルミ(ペルシャグルミ)とテウチグルミを交配した品種。
テウチグルミよりも更に殻が薄く、固有種よりも実が大きく食べやすいのが特徴です。
日本の主なくるみの産地
くるみは古来、北海道から九州まで、日本各地に自生していますが、温かい地域よりも寒い地域、雨が多い地域より乾燥気味の土地を好みます。
現在日本の主要なくるみ生産地は、青森県と長野県です。2017年の生産量は長野県が1位で全国生産量153.2トン中112トン。その長野県内の生産量のほとんどが東御市で栽培されています。
青森県他で生産されるくるみは自然に自生しているオニグルミですが、長野県東御市のくるみは、栽培用に作られたシナノグルミとテウチグルミになります。
長野県産が農家さんによって栽培されているのは、明治時代中期から軽井沢に避暑に来た欧米人がペルシャグルミを持ち込んだ事が始まりとの事。
さらに大正時代になってすぐ天皇の即位を記念してこの東御市にくるみの苗木が配られました。降雨量が少ない寒冷地と、一見農産物の生育が難しそうな土地でも、くるみには適していたという事で、東御市は日本一のくるみの里になりました。
なお、青森県、長野県の他では、北海道や新潟県が国産くるみの生産地になります。
くるみを使った日本の郷土料理
縄文時代から食べられていたくるみ。日本各地で伝統料理になっていると思いきや、くるみを使った郷土料理は主に東北地方、特に岩手県で親しまれています。
今回はその中でも有名なものをご紹介します。
くるみゆべし
もち粉を使った柔らかい生地に、しょうゆや砂糖などで味を付けた和菓子の一種。
漢字では「柚餅子」と書くように、本来は柚子を使うところ、柚子が手に入りづらかった東北地方ではくるみを練り込んで作っています。
くるみ豆腐
滑らかに摺って漉したくるみに水、砂糖を入れてくず粉で固めた、胡麻豆腐のくるみ版の料理。
岩手県奥州市の江刺地方特有の料理で、お盆や法事の精進料理として刺身の代わりに出されます。
くるみ雑煮
東北の三陸沿岸北部地方で、お正月や結婚式などのお祝いの場で食べられる料理。
根菜などをたっぷり入れた醤油味の出汁に焼き餅を入れ、餅を食べる時はそのまま食べたり、別の器に入れたくるみだれを絡めて食べたりして楽しめるお雑煮です。
なお、くるみ生産量日本一の長野県東御市のお雑煮も、くるみだれを絡めて食べるそうです。
まとめ
くるみというと、洋菓子の焼き菓子に入っているとか、お酒のお供の乾きものというイメージもあるかもしれませんが、日本でも古くから食べられてきました。
輸入くるみのペルシャグルミと日本固有種は、形も味わいも違います。くるみについて深く知り、種類ごとに食べ比べる等して楽しんでみて下さいね。
参考
教職員生涯福祉財団 https://www.kyosyokuinzaidan.jp/column/mimiyori/walnut.html
みんなの趣味の園芸 https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-576
日本ナッツ協会 http://www.jna-nut.org/?p=170
わかさの秘密 https://himitsu.wakasa.jp/contents/walnut/
くるみ博物館 https://www.jpwalnut.co.jp/museum/walnut/index.html
BOTANICA https://botanica-media.jp/4768?p=2
まるごと青森 https://www.marugotoaomori.jp/blog/2006/10/1984.html
長野県産業労働部 https://blog.nagano-ken.jp/nihonichi/agri_product/50.html
雷電くるみの里 https://www.raidenkurumi.jp/
銀座NAGANO https://ginza-nagano.jp/lifestyle/22404.html
JA長野県 https://oishii.iijan.or.jp/products/post-1446
COOTA https://www.cotta.jp/special/article/?p=35092
いわての文化情報大事典 http://www.bunka.pref.iwate.jp/archive/food75
農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/28_27_iwate.html
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2001/spe2_03.html
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/28_29_iwate.html
タイ、バンコクにて8年間、料理教室コーディネーターなどをしながら、世界各地で料理を学ぶ。
日本帰国後は、タイ料理教室を主宰しつつ、日本の美味しい農産物とアジア料理とのコラボレーション・イベントを企画運営するなど、日本のクオリティの高い食材と出会う活動を行う。また、一児の母としての経験も基に、子ども向け食育ワークショップなどの活動にも力を注ぐ。