「しもつかれ」とは

 

しもつかれとは、栃木県を中心に作られている郷土料理で、2月の初午の時に食べます。大根、人参を鬼おろしという粗めのとぎ道具でざっくりすりおろし、油揚げ、大豆、鮭の頭、酒かすと一緒に煮込んで作ります。

 

▶初午についてもっと知りたい方はこちら

初午とは?その由来や楽しみ方に迫る【いなり寿司で家内安全を願う】

 

▲これが鬼おろし。大根、にんじんをすり下ろします。

 

「しもつかれ」の名前の由来

 

しもつかれの原型は、大豆にお酢をかけて食べたものだと言われています。

 

名前の由来について、その食べ方から最初は「す(酢)むつかり」と呼ばれていたものが、煮込み料理になり「しみつかる(味がしみこむ)」という言葉が崩れて「しもつかれ」になったという説が1つ

 

また、栃木県の旧国名である「下野(しもつけ)の国」で作られたことから来ているという説もあります

 

なぜ初午の時期に食べられるようになったのか?

 

しもつかれは、稲作、農業、家内安全など、生活を支えてくれる神様である「お稲荷様」にお供えします。

 

はじまりは江戸時代中期に起きた天明の飢饉何年も天災が続き食べ物もろくに育たなかった時、お正月で残った鮭の頭、冬場に収穫できる大根や人参、節分で使用した大豆を煮込んで食べ、飢えをしのいだことがありました

 

このような天災が起きないように、初午の時期に食の神様であるお稲荷様に祈願してお供えしたことから、毎年初午の時期に作られるようになっています

 

しもつかれはSDGsが掲げる社会課題も解決できる「エコロジーフード」

 

しもつかれは、本来であれば捨ててしまう野菜の皮や魚の頭、節分の余った大豆なども使って作られている料理。その在り方から、SDGsの観点から評価できる料理でもあります。

 

伝統料理としてだけではなく、今世界で掲げているSDGsの目標にもリンクしている一面もご紹介します。

 

※SDGs(エスディージーズ)とは

「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。地球上に生きる人々を誰一人として取り残さないという考えのもと、17のゴールと169のターゲットが掲げられています。

 

▶SDGsについてもっと知りたい方はこちら

【地産地消、食品ロス対策…】 私たちもできる、食べ物の「SDGs」とは?

 

しもつかれは廃棄する食料がほとんどゼロ!

 

SDGsの目標12の「つくる責任、つかう責任」の中では、食料廃棄量の削減を謡っています。

 

本来であれば捨ててしまう野菜の皮や魚の頭、節分の余った大豆を使って作られているしもつかれは、そもそも捨てるという考えがなく、生まれた命を余すことなくいただくことができます。食に対するありがたみを象徴してできた料理です。

 

現代では、野菜であれば規格外の物は販売できないなど、食料廃棄の問題が顕著になっていますが、しもつかれには「捨てる」という概念を変えるためのアイディアが秘められていそうですよね。

 

その他にも、しもつかれには「近所におすそ分けしあって一人も残さず救い出そう」という想いも込められており、7軒分のしもつかれを食べると無病息災という謂れもあります。

 

SDGsの目標1の「貧困を無くそう」や、目標2「飢餓を無くそう」という部分にも繋がります。

 

しもつかれの作り方

しもつかれは、酒粕や鮭の頭を使うため少しクセの強い料理です。そのため好き嫌いが分かれてしまうところもあります。それを少しでも食べやすい料理として、アレンジレシピを100種類以上考案している川村葉子さんからレシピを伺いました。

 

 

材料(お鍋1杯分)

・鮭の頭 2つ(500gくらい)

・にんじん 2本

・大根 2本

・入り大豆 100g

・酒かす 100g

・油揚げ 2枚

・塩、醤油 お好みで

 

作り方

1.鮭の頭を塩を刷り込みながら浴洗い、圧力なべに入れ浸るまでお水を入れそこにお酒とお酢を投入。中火で20分くらい煮込む。

 

2.大根、にんじんは鬼おろしというおろし金で皮ごとすりおろし、好きな大きさに切った油揚げと大豆を鮭を煮たお鍋に入れる。

 

3.混ぜずに弱火で1時間くらい煮込み、鮭がほぐれたらOKのサイン。

 

4.最後に酒粕を入れて溶かし、塩、醤油で味付けして再度煮込めば完成。

 

豆知識!なぜ大量に作るのか?

■鮭がポイント

「食べ物を余すことなくいただく」という精神の元、鮭は頭まで丸々使います昔は生ものである鮭の頭は長期保存が難しかった時代。なので、1回の調理でしっかり使い切る必要がありました。

 

塩味と臭みが強い鮭の頭を上手に生かすには、大根が2本ほど必要になります。そうすると必然的に作る量は多くなるのです。ちなみに、水を入れてすぎてしまうとうまみが薄くなるので、栃木県民はあまり入れません。

 

■みんなで分け合う、年に一度の行事食

栃木県民にとって、初午の日にしもつかれを食べるのは、クリスマスと同じくらい当たり前。家族や親戚が集まって皆でいただいたり、先ほどご紹介したようなご近所さんに配るなど文化的要素もあります。

 

みんなで一緒に楽しむために、たくさん作るのです。

 

郷土料理は奥が深い!

郷土料理に触れる機会が減ってきている現代ですが、改めて見つめなおすと自分の生まれた土地の文化や歴史がわかってきます。

 

さらに、食という側面だけでない概念がたくさん含まれていることや、今のような便利に生活できる前の暮らしも垣間見え、食がいかに豊かになっているかも実感できます。

 

皆さんも、自分の生まれ故郷の郷土料理は何かを知ることで、食や文化の新しい価値に気づけるかもしれませんよ。

 

<参考文献>

日本の食生活全集(9)聞き書栃木の食事

<参照サイト>

農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/cuisine/

栃木県教育委員会

https://www.tochigi-edu.ed.jp/furusato/detail.jsp?p=54&r=242

しもつかれブランド会議プロジェクト

http:://shimotsukare.fun/

とちぎのしゅし

https://tochigi-seeds.com/negaposi5

外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

 

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