管理栄養士で節約美容料理研究家の金子あきこです。

 

「秋茄子は嫁に食わすな」

 

この語源になっているのが「夫木和歌抄(ふぼくわかしょう)」という鎌倉時代にできた和歌集です。

 

 

「秋なすびは早酒(わささ)の粕に漬きまぜて嫁にはくれじ棚におくとも」 

 

“嫁(よめ)”は“夜目”と書き、“ネズミ”を表します。つまり、「酒粕に漬けた秋茄子を美味しくなるまで棚に置いておくのは良いが、ネズミに食べられないように注意しろ」というのが本来の意味なのです。それに加え、「美味しい茄子を嫁には食わせたくない」という、姑からの嫁いびりの意味もあったようです。

 

嫁いびりが書かれていたことに少々驚きましたが、それ以外に嫁を思えばこその理由も実はあるようです。さてそれはどんなことなのか、今もやはり食べないほうがいいのか、考えてみます。

 

 

 

なぜ嫁は秋茄子を食べてはいけないのか。

秋茄子は種が少ないとされており、「子宝に恵まれにくくなるから避けるべき」や「茄子はもともと夏野菜で、体を冷やす作用があるため、冷えにより子宮を傷めないための気遣い」また「お腹を下しやすくなるので気をつけたほうがよい」という、若い嫁の体をいたわる意味が込められていたとも言われています。

 

鎌倉時代は妊娠や出産などの環境も今のようには整っておらず、問題も多々あり、出産しても子供が1歳になる率はごくわずかであったとのこと。そのため、少しでもリスクを避ける、という意味があったのかもしれません。

 

 

では、現代の嫁は食べてよいのか。

 

今は食が豊富な時代です。茄子は体を冷やすとされていますが、現代は茄子以上に冷やす食べ物は沢山ありますし、冷房もあります。

 

もちろん妊娠を希望されている方が体を冷やしすぎるのは禁物ですので、エアコンの温度を低くし過ぎないことや、冷たい物の食べ過ぎは気をつけてください。もし体が冷えたらホットドリンクを飲んだり、温かい湯船につかり体の芯から温めましょう。

 

ということで、昔と今では食や生活環境も大きく変わってきていますので、 秋茄子を食べてはいけないということはありません。

 

 

実は秋茄子が一番美味しい。

 

先程もお伝えしたように秋茄子は種が少ないため口当たりがよく、肉厚で美味しいのが特徴です。輪切りにして油で炒めて生姜醤油で味付けをしたり、油で焼いた茄子にチーズでをのせて食べるのはシンプルなのにとても美味しいです。

 

茄子に含まれているβ-カロテンは生の状態では100㎍/100gですが、 油で炒めることで190㎍にアップ します。さらにβ-カロテンは油と一緒に摂ることで吸収も良くなります。茄子を炒めて作る麻婆茄子や味噌炒め、素揚げにして大根おろしと醤油をかけて食べたり、揚げびたしにするなど油と組み合わせてみるといいですね。

 

油を使うことで摂取カロリーも上がってしまうのが気になる方は炒める、焼くの調理にするといいでしょう。また油をサラダ油からオリーブオイルや胡麻油、米油など質の良いものに変えてみましょう。油は種類によって味や風味が違いますからソテーにするだけでも美味しさが変わってきますよ。

 

 

茄子は皮ごと食べるのがおすすめ。

 

茄子の紫色はアントシアン系色素であるナスニンです。 抗酸化作用があり老化防止におすすめです。

 

茄子の切り口が酸化され茶色くかわることがありますよね。色が悪くなるから嫌だな。と感じますが、褐変させるクロロゲン酸というポリフェノールにも抗酸化作用があります。

 

酸化を防ぐにはボウルに水を入れて茄子を浸けておきます。アク抜きにもなりいいのですが、長時間つけすぎると水溶性の栄養素が流れ出てしまいます。できる限り料理前に切るといいでしょう。

 

いかがでしたでしょうか。

食欲の秋。美味しい茄子をぜひ美味しく食べて下さいね。

 

参考文献
・栄養学の基本がまるごとわかる事典(西東社) ・栄養の教科書(新星出版) ・旬の野菜の栄養事典(エクスナレッジ) ・文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」(女子栄養大学出版部) ・オールガイド食品成分表2015(実教出版)

 

 

 

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