タイ料理・シンプルクッキング研究家のサクライチエリです。海外生活をしていたとき、「好きな食べ物は?」という質問に国籍を問わず様々な方が「ポテト」と答えていたことが印象に残っています。
今回は、そんな世界的にファンの多い、じゃがいもの歴史と日本での活躍について調べてみました。
じゃがいもの歴史
じゃがいもの原産地
じゃがいもの原産地は南米アンデス山脈から中米のメキシコの高原地帯にかけての地域です。食用での栽培は、世界遺産である空中都市マチュ・ピチュの段々畑で紀元後500年頃から行われ、インカ帝国の重要な食料源でした。
ヨーロッパに渡ったのは15世紀終わり頃。インカ帝国に遠征したスペイン人が広めました。しかし、気候の違いから食用のじゃがいもヨーロッパで育つのは難しく、長い間観賞用として栽培されていました。
その後17世紀にヨーロッパ全土で戦争と飢饉がくり返されることで、当時の主食であったライ麦が取り合いになったため、育てるのが簡単なじゃがいもが食用として普及しました。
産業革命とじゃがいもの関係
厳しい気候でも育つじゃがいもは産業革命時の労働者の食糧としても威力を発揮します。
しかし、ある時じゃがいもが不作になり、アイルランドに飢饉が起こります。それを逃れるために多くのアイルランド人がアメリカやカナダに移住しました。今でも北アメリカにアイルランド系移民が多い理由には、じゃがいもが関わっていたのです。
日本でのじゃがいもの歴史
日本では慶長3年(1598年)にオランダ人が長崎に持ち込んだのがじゃがいもの普及の始まりです。
「じゃがいも」の名前の由来は、ジャワのジャガトラ港経由(現ジャカルタ)で入ってきたため「ジャガタラ芋」と呼ばれたのが起源という説があります。
食用じゃがいもは江戸時代から普及していたそうですが、本格的に栽培されるようになったのは明治以降の北海道開拓からです。
別名「じゃがいもの王様」と呼ばれる「男爵」は、川田龍吉男爵が留学中に英国人の恋人とじゃがいもを食べたことを懐かしみ、英国から種芋を輸入したのが始まりです。
また、メークインは男爵の後にアメリカから種芋が輸入されました。そして「男爵」とともに1928年(昭和3年)に北海道の優良品種として認められました。
「大地のりんご」じゃがいもの栄養
じゃがいもはフランス語で「大地のりんご」と言う意味をもちます。かつて大航海時代に壊血病の予防に貢献し、栄養価では「1日1個食べれば医者いらず」と言われたりんごと肩を並べることからこう呼ばれています。
栄養面での最大の特徴は、イモ類の中で最もビタミンCが豊富なことと、加熱してもビタミンCが減少しないことです。ビタミンC含有量は、りんごの約5倍量を誇ります。
他にも、じゃがいもにはビタミンB2・ビタミンB6・食物繊維・カリウムなども豊富に含まれています。
腹持ちがよく、ミネラル・食物繊維の豊富なじゃがいもは長い歴史を通じて人々の健康に寄与してきました。
料理別・じゃがいものおすすめ品種
日本では長い間「男爵」と「メークイン」が食卓に並んできましたが、今ではこの2種類の他にも様々なじゃがいもが手に入るようになりした。
手に入るじゃがいもの種類が多くなると、どのじゃがいもをどんな料理に使えば良いのか迷う方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、お料理別でおすすめの品種をご紹介します。
【メークイン、とうや】じゃがいもの形が無くならないカレー
カレーにいれたじゃがいもが溶けてしまうのを避けたい方は、煮くずれしづらいメークインや、とうやを使うことをおすすめします。
【男爵】初心者が失敗しない粉ふき芋
粉ふき芋であれば、ほくほく感・粉の吹き加減・形の残り方をふまえて、男爵を使うことお勧めします。
男爵はポテトサラダ、マッシュポテト、コロッケにもおすすめです。
【キタアカリ】ワンランク上のコロッケ
コロッケを作りたいときには、キタアカリをおすすめします。男爵を上回るでんぷん質含有量であるかつ、香りと味が強い品種なので、いつもとは一味違うコロッケを作ることができます。
キタアカリはマッシュポテトにしても濃厚でクリーミーでおいしいです。
【インカのめざめ、キタムラサキ】高級フライドポテト
ナッツや栗のような風味と評される、濃厚な味わいのインカのめざめはフライドポテトにするのがおすすめです。輝く黄金色が食欲をそそります。
色を鮮やかに見せたいときは、キタムラサキでフライドポテトを揚げると良いでしょう。キタムラサキの紫色は煮るとくすみますが、油で揚げると鮮やかに残ります。
【十勝こがね】欲張りな肉じゃが
男爵のようなほくほく感が欲しいけれど、煮崩れは避けたい方は十勝こがねで肉じゃがを作ってみてください。ほくほく感と煮崩れのしにくさの両方を兼ね備えた品種です。
まとめ
いつも食卓に並ぶじゃがいもの歴史や栄養に関するお話しをお楽しみいただけましたでしょうか?また、様々な品種のじゃがいもの使い方も、参考になれば幸いです。
今回ご紹介した品種の他にも、まだまだたくさんの美味しいじゃがいもがありますので、色々な料理で使ってお楽しみください。
種類によって全然特徴の違うじゃがいもをぜひ試してみてくださいね。
参考文献
(JAきたみらい)https://www.jakitamirai.or.jp/nousantop/potato/potato2/
(農林水産省) https://www.maff.go.jp/j/agri_school/a_tanken/zyaga/01.html
(歴史の窓)https://www.y-history.net/appendix/wh0204-002_2.html
(北海道ファンマガジン) https://hokkaidofan.com/potato/
(食品成分データベース)https://fooddb.mext.go.jp/err/error.pl?USER_ID=&ERR_CD=ERR_5&FROM=result
(わかさの秘密)https://himitsu.wakasa.jp/contents/potato/
(Calbee)https://www.calbee.co.jp/diary/archives/4879
(農研機構)https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/jhandbook2016.pdf
タイ、バンコクにて8年間、料理教室コーディネーターなどをしながら、世界各地で料理を学ぶ。
日本帰国後は、タイ料理教室を主宰しつつ、日本の美味しい農産物とアジア料理とのコラボレーション・イベントを企画運営するなど、日本のクオリティの高い食材と出会う活動を行う。また、一児の母としての経験も基に、子ども向け食育ワークショップなどの活動にも力を注ぐ。