タイ料理、シンプルクッキング研究家のサクライチエリです。
以前、蜂蜜の価格の違いの記事で、私たちの手に届く蜂蜜は養蜂家によって育てられていることをご紹介しました。
今回は、その養蜂家について詳しく知るべく「巣鴨養蜂園」の販売担当、米田望さんにお話をお聞きしました。
巣鴨養蜂園とは?
異業種から養蜂の世界に飛び込みこだわりのはちみつを作る父親と、販売担当としてはちみつマイスターの認定講師・アスリートフードマイスターの資格を持つ娘の二人三脚で営む養蜂園です。
天然のはちみつの良さを多くの皆様にお届けしたいという思いで、父親の故郷の岩手県西和賀町で巣箱つくりから瓶詰めまで、すべて手作業で行われています。
父が消防士から養蜂家に。娘は主婦からはちみつマイスターに。
――編集部:
「巣鴨養蜂園」という名前から巣鴨で養蜂をされているのかと思いましたが、岩手県を中心に養蜂を行われているのですね。異業種から養蜂を始められたとの事ですが、きっかけは何だったのでしょうか?
米田さん:
よく聞かれるのですが、父が巣鴨で養蜂を始めたから「巣鴨養蜂園」としました。もともとは、消防士だった父がある日『銀座でみつばち飼いませんか?』という新聞広告を見て「面白そう!」と思い、“銀座ミツバチプロジェクト”というプロジェクトに参加したのがきっかけです。
父はプロジェクトの第1期生として養蜂講座を受講したのですが、その後、当時住んでいた巣鴨の二階建一軒家のベランダで養蜂を始めました。
――編集部:
お父様が突然に巣箱を持って帰られたときは、反対されなかったのでしょうか。
米田さん:
最初は大反対でした。ただ、父が巣鴨の自宅で養蜂を始めた後に父のはちみつを食べたプロキックボクサーの夫が、「減量時でも体調が良い」と言うのです。そこから私もはちみつについて調べるようになり、はちみつマイスター認定講師の資格まで取ってしまいました。
父の養蜂を応援しようと本気で思ったのは、父が消防士を早期退職して故郷の岩手で本格的に養蜂をやるという決意を聞いた時です。「父なら本当に美味しいはちみつ作りをしてくれる、父にははちみつ作りに専念してもらいたい」と思い、販売担当を買って出ました。
スプーン1杯が25㎏のはちみつになるまで
――編集部:
現在、巣鴨養蜂園では、どれくらいの蜂を飼育されているのですか?
米田さん:
合計で80~100の巣箱を取り扱っています。
生産量は巣箱によってばらつきはありますが、大体1群(1箱)で25㎏程のはちみつが採れ、1年の総生産量は2トンほどになります。
――編集部:
ミツバチ1匹あたりどのくらいの量のはちみつを作るのでしょうか。
米田さん:
1匹のミツバチが一生に集めるはちみつの量がティースプーン1杯分と言わています。本当に、ミツバチには感謝してます。
――編集部:
はちみつが出来るまでの1年間の工程を教えてください。
米田さん:
冬の間は養蜂に関する行政とのやり取りや、巣箱や蜂場の整備を行い、春のシーズンに向けてミツバチが元気に働けるように準備をします。
私たちの場合、全部で6ヶ所ほど蜂場の中を1年のうちにいろいろな場所へ移動します。
そのため、きちんと蜜源植物があることや綺麗な水場があるか、風が強すぎないか、など色々なポイントを押さえながら巣箱を置く場所を決めます。
置き場所によって同じ蜜源植物でも味や香りが様々なので、お気に入りのポイントを見つけるのも楽しいです。
そして春、花が咲きだす前にサクラならサクラ、アカシアならアカシア、という風に蜜源植物の状態を調査し蜂場に巣箱を移動します。
シーズン中は毎日ミツバチの様子を内検し、病気がないか、女王がきちんと産卵しているか等のチェックをし、蜜が溜まれば採蜜します。
はちみつの味や香りをチェックし、遠心分離機にかけ糖度を計り味をみます。東京の事務所に送り副代表と味や香りのチェックを行い瓶詰をし出荷です。
畜産業であり、農業とも深く関わる養蜂業
――編集部:
お父様の趣味が高じて生業になったということですが、苦労されたことや、養蜂をやって良かったと思われることがありましたら教えてください。
米田さん:
趣味として巣鴨の自宅で飼育していたのは日本ミツバチという種類で、現在飼育する西洋ミツバチとは種類が異なるので、最初のうちは飼育方法・味への探求に苦労しましたね。
――編集部:
ミツバチの種類によって、飼育法が違うのですね。他に何か学ばれたことはありますか?
米田さん:
私は、父が養蜂家に転身したお陰で、今まで生きてきた世界とは全く異なる視点で食や生産というものを見ることができました。
そして、養蜂や商売を通じてたくさんの人と出会えたことが何より嬉しいです。
――編集部:
養蜂業界に新規参入された身として、養蜂業界に思うこと等はありますでしょうか?
米田さん:
養蜂業界も高齢化が進み、次の世代への橋渡し役が必要だと思います。
また養蜂は畜産業なのですが、農業や自然との繋がりをもっともっと密にしていかないとですね。
――編集部:
養蜂は、畜産業なのですか?知りませんでした。
米田さん:
生き物を飼ってそこから恩恵を受けていから畜産業になるのですね。
農薬の問題や山や作物・暮らしを守るにはミツバチの力は不可欠ですので、養蜂業と農業の関係を密にして、より良い風土を作っていきたいと考えています。
インタビューを終えて
蜂蜜ができるまでの過程や養蜂家さんの想いを知ると、よりはちみつのおいしさが感じられます。
巣鴨養蜂園さんの蜂蜜は雑味がなく、花の香りまで楽しめると老若男女問わず大人気。よろしければぜひご確認下さい。
タイ、バンコクにて8年間、料理教室コーディネーターなどをしながら、世界各地で料理を学ぶ。
日本帰国後は、タイ料理教室を主宰しつつ、日本の美味しい農産物とアジア料理とのコラボレーション・イベントを企画運営するなど、日本のクオリティの高い食材と出会う活動を行う。また、一児の母としての経験も基に、子ども向け食育ワークショップなどの活動にも力を注ぐ。