筆者自身、都心に暮らしながら週末援農などに興味がありました。そこで今回、山梨県北杜市で「自然の巡りに寄り添う暮らし」を実践する「ぴたらファーム」さんを訪れ、自然と共存する暮らしの面白さと難しさについて体験してきました。
ぴたらファームとは?
「ぴたらファーム」は、山梨県北杜市にあるパーマカルチャーの考えを取り入れた自然循環型オーガニックファームです。北杜市は南アルプスの天然水で有名なお水の源流があるところで、自然の恵みを実感できる場所です。
このファームには運営スタッフ5名のメンバーが常時滞在し、その時々で「「WWOOF(ウーフ)※1」を活用して来る人や「半農半X」に興味を持ち、「X」を見つけるお試しファームステイをしたい人などが集まっています。
ファームにあるシェアハウスに住みながら、ぴたらの暮らしを通して農ライフを体験し、共同でファームを育んでいるのです。
「ぴたらファーム」の農ライフの主軸は、自然の巡りに合わせ、自然に還る素材を使う生活スタイルである「パーマーカルチャー」です。
「パーマカルチャー」という言葉は、パーマメント(永続的)×アグリカルチャー(農法)×カルチャー(文化)をかけ合わせた造語です。
大地を再生し、そこに生まれたものを食し、生きている全ての生物が共存していける場所を築いていくことを掲げてできた概念でオーストラリアが発祥とされています。
※1:WWOOF:World Wide Opportunities on Organic Farms (有機農業で働きたい人)の略称。ファームステイしながら有機農業の体験ができる仕組みを提供している団体。
※2:半農半X:暮らしの半分を農に費やし(暮らしを賄う)、もう半分(X)で自分の好きなことで仕事をする(収入を賄う)ライフスタイル。
「ぴたらファーム」の「自然の巡りに寄り添う生活」の実例
「自然の巡りに寄り添う暮らし」とはどんなものか。ぴたらが実践している生活がどのようなものなのか紹介します。
全て手作り!コンポストトイレ
コンポストとは、直訳すると「堆肥」。し尿を微生物の発酵の力で分解処理し、自然に返せるようにしたトイレがコンポストトイレです。1番気になる「臭い」ですが、それも一切しないのが驚きでした。
その仕組みをファーム長の田才さんに伺ったところ、「臭い成分を分解できる微生物たちを元気にさせる仕組みを整えてあげること」がポイントとのこと。
①し尿にもみ殻、おがくずを入れる、②微生物が活発的に活動できる暖かさ(温度)を保つ、③空気の流れを作り水分を蒸発させる。この3つをキープすることで、[underline]臭いが発生せずにいられるそうです。
昔のもみ殻分別機!トウミで食べられる部分を仕分け
収穫した大豆や米麦などは、最初から店頭に並んでいるようなきれいな状態ではありません。
未熟であったり、割れがあったり、食すことや商品にできないものが混じっています。それを手動で起こす風の力により、分別できるのがトウミ(唐箕)という昔からある農業機材です。
口が3つあり、①身が入っているもの、②微妙なもの、③カスの3分類を分別します。
細やかな作業も、手動で行うことでより丁寧に食材や機材を扱おうという気持ちになりますね。
エネルギーも自給自足!
電気、水道、ガス、今では暮らしには欠かせないエネルギーですが、ぴたらファームではこれもなるべく自分たちで作り出す努力をしていました。
電気をソーラーパネルで蓄電して、建物の一部の電力をまかなっていたり、水も無駄遣いしないよう、食器洗いには米のとぎ汁や雨水を使用したりしています。
その他にも自然を活用した暮らしがいたるところにありました。
ファームのメンバーが住まう家は築100年を超えた古民家を再生して活用したものだったり、天気がいい時は庭で飼っている鶏を「チキントラクター」というガレージに入れ、庭の雑草を食べてもらっていたり。
鶏に脚の爪で草をひっかいてもらい、庭の草むしりを手伝ってもらっていたりもするそうです。
このように、暮らしの中でいかに工夫して生きていくかを考えながら生活することも自然と共に暮らす一つの面白さですよね。
仲間と一緒に作り上げる自然と共存するための持続可能な暮らし
「ぴたらファーム」は、冒頭でご説明した通り、複数名の運営メンバーで支えられています。今回は、運営に関わる理由についても聞いてみました。
「1人で今の暮らしをしようとしても、稼ぐための農業でいっぱいいっぱいの仕事量になってしまったと思います。それぞれの得意分野を生かし興味分野に取り組み、それをみなと分かち合うことで楽しく豊かな暮らしをすることができます」とファーム長の田才さん。
仲間がいれば、壁にぶち当たったとしてもアイディアを共有でき、解決ができる。また考える時間もそれだけ生まれる。何より、心の余裕がなければ自然を大切にするということを想えることもなくなってしまいます。
この仲間がいることで、農作物栽培だけでなく、農体験の受け入れ、ワークショップ、加工品の販売、シェアハウスの経営など「農」を主軸とした暮らしの体験を提供できる、ぴたらファームの魅力が生れているんだなと感じました。
こちらの写真は、ファームで育てた食材で作成したお料理。皆さんの話を聞いた後に食べるとよりおいしく感じることができます。
まとめ
ファーム長の田才さんがこのように教えてくれました
「人は土に生かされていること。自然の循環の中で生かされているということをしっかりと実感してほしいと強く思います。それを日常の中で意識して生きていくだけでも自然と見る目線が変化していくと思いますよ」
都市部にいるとどうしても大量消費の生活が当たり前になり、モノを大切することが薄れてしまっています。買うのではなく自分で作るを意識して暮らすことも農ある暮らしの一歩だと感じました。
例えば、
①近場には車ではなく徒歩や自転車で移動して、エネルギーの無駄使いを減らす。
②環境負荷の少ないオーガニックな食材や衣服、日用品を選ぶ
③ペットボトルを購入するのではなく、タンブラーや水筒に飲み物を入れて出歩くなど少しの配慮してゴミにならない自然素材を選ぶ。
④マイクロプラスチックの削減となるよう、食器洗いスポンジは使わず自然へ還るヘチマスポンジを使う。
など少し意識を自然に向けることで、身の回りには実践できることはたくさんありますよね。
この記事がきっかけで、新しい暮らし方を考える中で農のある暮らし、自然と共存する暮らしが身近にあるということの一歩に繋がるといいなと思います。
ぴたらファーム基本情報
〒408-0313
山梨県北杜市白州町横手1118
ぴたらファーム
URL:https://pitarafarm.com/
Tel:0551-35-2793
E-mail:info@pitarafarm.com(イベントや農体験 その他に関する問い合わせ)
:shop@pitarafarm.com(野菜・米・加工品の販売に関する問い合わせ)
・パーマカルチャーとは?
・ぴたらファーム
https://pitarafarm.com/about/lifestyle.php
・サントリー 天然水のふるさと
https://www.suntory.co.jp/water/tennensui/source/alps/
・wwoofjapan
ウェブメディア運営兼ライター。田舎育ちの感性から、”食材はありのままがおいしく、身体に良い影響を与えてくれる”。この想いが伝わるような記事を発信したいと思います!
好きな食べ物は大豆。