秋の果物といえば「柿」という人も多いのではないでしょうか。明治時代に正岡子規が「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」と詠んだことでも知られ、古くから日本人になじみのある果物です。
柿の種類
柿は「甘柿」と「渋柿」に大別されますが、その中でも「完全」・「不完全」に分類されます。
完全甘柿
「完全甘柿」は、種の有無に関わらず渋みがありません。
中でもよく知られているのが「富有柿」。すべての柿の中でもっとも生産量が多く、岐阜県瑞穂市発祥といわれています。丸形で果肉は比較的柔らかく、果汁が多いのが特徴です。
▼「富有柿」
また、「次郎柿」も「完全甘柿」に分類され、丸みのある四角形でしっかりした食感が特徴的です。甘味も強く日持ちも良いため、生産量では「富有柿」には及びませんが人気のある品種です。
▼「次郎柿」
また、果実の大きさが特徴的な「太秋柿」や、比較的新しい品種の「早秋柿」なども「完全甘柿」に分類されます。
▼「太秋柿」
▼「早秋柿」
不完全甘柿
「不完全甘柿」は種が多く入るとその周辺に黒い斑点ができ、渋みを感じにくくなる柿です。黒い斑点は「ごま」とも呼ばれ、柿の渋さを判断するのに重要な役割を果たしています。こちらは渋抜きを行なってから出荷されるのが一般的です。
代表的な品種は「西村早生柿」。「早生」と名の付く通り、早く出荷できる柿として人気があります。表皮は美しい橙色で丸みを帯びています。
▼「西村早生柿」
他には「禅寺丸柿」「筆柿」などが「不完全甘柿」に分類されます。
不完全渋柿
「不完全渋柿」は、種があるとその周辺の渋みが抜けている柿です。
代表的な品種は「平核無柿」。「平らで種(核)が無い」という名の通り、種がない扁平な柿です。そのままだと渋みがあり、「あんぽ柿」などに加工されることが多い品種です。
▼「平核無柿」
「平核無柿」の枝変わりとして発見された「刀根早生柿」も「不完全渋柿」です。
また、百匁(=約375グラム)のサイズがあることからその名前が付いたともいわれる「甲州百目柿」も「不完全渋柿」に含まれます。こちらも干し柿などの加工品にすることが多い柿です。
干し柿については、「晩秋の手仕事。甲州百目の枯露柿づくり【軒先彩る柿すだれ】」でもご紹介していますので、チェックしてみてくださいね。
完全渋柿
「完全渋柿」は種の有無に関わらず渋みのある柿です。渋みはあっても糖度は高いので、渋を抜けばおいしく食べられます。こちらも「不完全渋柿」同様、干し柿などの加工品にされることが多い柿です。
代表的なのは「市田柿」。長野県にある高森町市田地域で栽培されていたことから名がついた柿です。小ぶりですがきめ細やかで上品な味わいの干し柿が広く出回っています。
その他、「西条柿」や「愛宕柿」なども「完全渋柿」に分類され、ほとんどが干し柿に加工されています。
選び方と保存方法
ヘタの形が整っており、果実との間に隙間がないものを選びましょう。皮には張りやつやがあって全体的に色づいているものがおすすめです。やわらかいものは熟しすぎている可能性がありますので、できるだけ避けるようにしましょう。
保存する場合は、ヘタを下にしラップで包むか、保存袋に入れ冷蔵庫に入れましょう。かたい場合は常温に置くと数日でやわらかくなります。
楽しみ方
柿を切る場合、果肉の溝に沿って切ると種を避けることができます。ヘタを取って皮をむき、いただきましょう。
また、味が特徴的な野菜と合わせてサラダにするのもおすすめです。
例えばクレソン。ピリッとした辛みと甘い柿の相性は抜群。砕いたナッツとチーズを添えて塩胡椒とオリーブオイルで仕上げてみました。ワインにも合う一品です。
他に、春菊やルッコラなどとも合います。
柿の加工方法として、トロトロの柿プリンはいかがでしょう。作り方は、柿とその半分の重量の牛乳をミキサーで撹拌し、冷蔵庫で冷やすだけです。
ゼラチンや卵などは使っていませんが、柿のペクチンと牛乳のカルシウムが反応しトロトロ食感になります。
他にも、豆腐と白和えにしたり、肉や魚と合わせて照り焼きにしたりするのもおすすめです。どの場合も普段のレシピより砂糖を少なくし、柿の甘味を活かしてくださいね。
まとめ
柿は1,000種類以上の品種があるといわれ、今回ご紹介したのはそのごく一部です。地域に根付いた柿もたくさんあり、そのどれも出回るのは秋です。
実りの秋ならではのおいしさ、ぜひ味わってくださいね。
秋・冬の旬くだものカキ(JAグループ)
https://life.ja-group.jp/food/shun/detail?id=71
aff(あふ)2018年10月号(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1810/pdf/1810_all.pdf
柿の概要(和歌山県)
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/130300/20/21/saibai/hinsyu.html
富有柿発祥の地、瑞穂市(瑞穂市)
https://www.city.mizuho.lg.jp/fuyuu/
果実の知識「富有柿」(丸果石川中央青果)
http://www.maruka-ishikawa.co.jp/fruits/items002/fuyukaki.htm
果実の知識「次郎柿」(丸果石川中央青果)
http://www.maruka-ishikawa.co.jp/fruits/items002/jiroukaki.htm
果実の知識「平核無」(丸果石川中央青果)
http://www.maruka-ishikawa.co.jp/fruits/items002/hiratane.htm
あんぽ柿(JA南アルプス市)
https://www.ja-minami-alps-city.or.jp/products/persimmon/
市田柿(JA南信州)
https://www.ja-mis.iijan.or.jp/product/ichidagaki.php
柿(JAグループ茨城)
http://www.ib.zennoh.or.jp/amore/crop/kaki.html
o-dan
https://pixabay.com/photos/persimmons-fruit-fresh-colorful-1456186/#content
工学部卒の元SE。
結婚後、「焼肉屋の嫁が野菜ソムリエっておもしろくない?」という興味で野菜ソムリエプロの資格を取得。その後もフードツーリズムマイスターやフードロスゼロ料理アドバイザーなどの食に関する資格を取得し、現在は自治体等と連携しながら農産物のPRや地産地消の推進、食育活動などを行なっている。