在来種の野菜が失われつつある理由

 

野菜を収穫したら、その種を自分で採って次の季節に備える。かつてはそれが当たり前のように農業の営みの中に組み入れられていました。

 

しかし、農家の間で安定した収穫が見込める「良い種」を購入することが一般的となりました。地域で連綿と作り続けられていた野菜ではなく、まったく別の土地で生まれた野菜同士をかけ合わせた種が売られ、全国各地でその種から野菜を育てることが当たり前になったのです。

 

 

例えば、皆さんはダイコンと聞いてどんな形を想像するでしょうか。

 

スーパーマーケットなどによく並んでいる、頭が緑っぽい長い大根でしょうか。現在市場に出回っているのは葉の根元辺りが緑色の「青首大根」が主流ですが、昭和50年代以前の関東地方では「白首」品種が主流だったそうです。青首大根は、大根の味の特徴である辛味・苦味がマイルドで「食べやすい」と消費者が歓迎したこともあり、さらに「曲がりにくい」品種が作られるなどして今日に至ります。

 

従来種と言える白首大根は、青首大根に比べて苦味・辛味が強いだけなく育ち方も大きく違います。白首大根は食用する根の部分が下に向かって伸びて成長しますが、青首大根は地上と地下、両方に向かって伸びるのです(このため地上部が緑色になるのです)。そのため、長さが同じほどの大根であれば、青首大根は浅植え、白首大根は深植えになるため、収穫時の負担も大きく違うのです。

 

大根に限らず、在来種の欠点を改良した新しい品種が広まっていったのは、当然の流れだったのかもしれません。

 

在来種を「伝統野菜」として見直す動き

 

地域で受け継がれていた在来種の野菜のなかには、栽培上のコスト面などから一時敬遠されて生産量が減少し、消滅の危機にあった品種もあります。しかし、近年ではその土地の風土や食文化と密接なつながりを持つ在来種の良さを見直し、「伝統野菜」として地域の名前を冠して守り、育てる動きが広まっています。

 

例えば、京都ではいわゆる「京料理」を作るために欠かせない在来種を公的機関が関わって、いち早く保護する動きがあったそうです。その他の地域でも、民間の団体やJAなどが連携し、地域に伝わってきた種を守り、増やす試みが行われています。

 

在来種が一時大きく廃れてしまっていたのは、収穫のばらつきや育成にかかる時間が長いだけでなく、自家採種を行うのは手間がかかることも理由として挙げられます。

 

「伝統野菜」と呼ばれるようになった現在では、品評会で優良と評価された野菜から採取した種を生産者に分配したり、隔離した畑を栽培場所として他の品種と交雑させないようにしたりするなど、手間を惜しまず管理することで伝統野菜とされた品種の質を高める努力もなされています。

 

土地によって味や形が異なる伝統野菜も

 

市場に出回っている野菜の多くが均一化されてしまっている現代でも、地域によって同じ料理であっても食べられる野菜の違いが見られることがあります。

 

例えば、ネギをすき焼きで食べる場合、関東では白い部分を楽しむいわゆる「根深ネギ」を使うのが主流です。しかし、関西では緑の部分が多い「葉ネギ」を食べることが多いと言われています。淡路島のようなタマネギの産地であれば、長ネギよりもタマネギをすき焼きに使うことが多いのだそうです。

 

 

ナスも、九州や東北では40センチほどにもなる「大長ナス」が好まれ、関東や岡山では「千両ナス」と呼ばれる中長ナスが多く作られています。何気なく好んで食べている野菜が別の土地ではあまり知られていないということも珍しくないかもしれません。

 

郷土料理として漬物がよく食べられている地域であれば、昔ながらの白首大根が伝統野菜とされていることが多いですが、煮物を好む土地柄であれば甘くて柔らかく炊ける丸大根が伝統野菜となっていることもあるようです。

 

「伝統野菜」はブランド化されていることも多く、比較的高価なものも少なくありません。ただ、「地産地消」が推奨されている今、地元の小売店でも手軽に手に取りやすくなっている伝統野菜もあります。

 

もし、地元の伝統野菜があれば、ぜひ味わってみてください。そして、他の地域の伝統野菜が手に入る機会があれば、どんな地域で育てられたのかを想像して食べると、また違った味わい方ができるかもしれませんね。

 

日本の伝統野菜とおいしい食べ方の記事はこちら

固定種・在来種についてもっと知りたい方はこちら

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